『エクソシスト』俳優の息子が映画で供養!?『ザ・エクソシズム』でもオマージュ満載の“エクソシストの災い”とは?
公開から50年以上が経ついまもなお、ホラー映画の金字塔として多大なる影響を持つ『エクソシスト』(73)。『エクソシスト 信じる者』(23)から始まったリブート版三部作が進行しているなか、『エクソシスト』のDNAを継ぐといっても過言ではない『ザ・エクソシズム』が公開中だ。
『エクソシスト』的映画の撮影現場を描くメタ的なストーリー
『ヴァチカンのエクソシスト』(23)で悪魔祓いに挑む神父を演じたラッセル・クロウが主演を務め、再び神父を“演じる”本作。
妻の死をきっかけとするドラッグと酒の依存症に長年苦しんできた落ち目の俳優アンソニー(ラッセル・クロウ)のもとに、前任者が謎の死を遂げたある悪魔祓いモノ映画の神父役の話が舞い込んでくる。娘リー(ライアン・シンプキンス)とのギクシャクした関係を修復するためにも、再起を誓うアンソニーだったが、撮影が進むにつれて心身共に追い込まれ、不可解な言動を繰り返していく…。
メガホンを握るのはジェイソン・ミラーの息子!
悪魔祓い映画の撮影現場で起きる恐怖を描くメタ的構造がユニークな本作でメガホンを握っているのは、ジョシュア・ジョン・ミラー監督。『エクソシスト』で悪魔と壮絶な戦いを繰り広げ、最後には自ら命を絶つカラス神父を演じたジェイソン・ミラーの息子だ。
ジョシュア・ジョン・ミラー監督といえば、製作総指揮と脚本を担当した『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』(15)では、亡くなった母の出演映画の世界に娘が入り込んでしまい、映画のなかで母を救うべく奮闘する…というメタ的な構造の物語を、往年の名作スラッシャー映画へのオマージュを盛り込みながら作り上げ、ホラーファンの間で話題となった。
“エクソシストの災い”へのオマージュがてんこ盛り!
『ザ・エクソシズム』では『エクソシスト』にオマージュを捧げており、『The Georgetown Project』という劇中映画の企画タイトル、ワシントンD.C.のジョージタウンに暮らす少女に取り憑いた悪魔に神父が挑むという劇中映画の内容に加え、事故が多発し壮絶だったことで有名な『エクソシスト』の制作秘話“エクソシストの災い”もパロディに。
主人公アンソニーの苗字であるミラーが、ジェイソン・ミラーを思い起こさせるのはもちろん、監督のピーター(アダム・ゴールドバーグ)がアンソニーから演技を引きだすためにトラウマと無理やり向き合うよう様子は、銃声にトラウマを持っていたジェイソン・ミラーの背後で銃をぶっ放したというフリードキンのトンデモ演出秘話を思い起こさせる。
また『The Georgetown Project』の撮影に関わった俳優を襲う怪死も、撮影の2週間後に亡くなったジャック・マッゴーランをはじめ数々の関係者が亡くなったという『エクソシスト』の逸話を彷彿とさせる。さらには照明機材の事故、キンキンに冷やされた冷却ルームなど『エクソシスト』の撮影現場のネタが随所に散りばめられている。
息子(ミラー監督ではない)が砂浜でオートバイに轢かれて怪我をしたり、度重なる離婚を経験したりと、数々の苦難を味わった父ジェイソン・ミラーへの想いが込められている『ザ・エクソシズム』。呪いに見舞われる主人公アンソニーに、ジョシュア・ジョン・ミラー監督はどのような救いを描いているのか?劇場でチェックしてみてほしい。
文/サンクレイオ翼