【ミニシアターランキング】『聖なるイチジクの種』が初登場1位!2月14日~2月16日の成績を紹介
2月14日から2月16日までのミニシアターランキング(公開30館以下スタートの作品が対象)が興行通信社から発表された。今週は、前回「台風の目になるのは間違いない」と書いた『聖なるイチジクの種』(公開中)が初登場でいきなりトップに。2週連続で1位に君臨していたペドロ・アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(公開中)が一つ順位を落としたものの根強い人気を見せ、『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』(公開中)が先週の5位から4位にランクアップ。現代社会に潜む陰謀論、「世論操作」の実態に迫る韓国発の犯罪スリラー『コメント部隊』(公開中)もタイムリーな内容が支持されて5位に入ったのが印象的だ。だが、それ以上に目をひくのが、先週までランキング圏外だったドキュメンタリー映画『104歳、哲代さんのひとり暮らし』(公開中)が封切から3週目のいまになって3位に食い込んできたことだろう。最近のミニシアターはコアなファンがいるホラー&スリラー系の作品と私たちの生活や人生にもつながる身近な問題やテーマを扱った作品に人気が集まっている気がするが、『104歳~』も広島県の山あいの町でひとり暮らしをしている石井哲代さんの生き方に憧れや関心を持った人たちの間で噂が広がり、今回のランクインにつながったと思われる。
【ミニシアターランキングトップ5】(2月14日~2月16日)
1位『聖なるイチジクの種』(NEW)
2位『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(先週1位↓)
3位『104歳、哲代さんのひとり暮らし』(-)
4位『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』(先週5位↑)
5位『コメント部隊』(NEW)
1位の『聖なるイチジクの種』は2024年の第77回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第97回アカデミー賞国際長編映画賞にドイツ代表としてノミネートされている衝撃のサスペンス・スリラー。『悪は存在せず』(20)などで国際的に高い評価を得ながらも、母国イランでは映画で政府を批判したとして有罪判決を受けたモハマド・ラスロフ監督が、2022年に実際に起きた若い女性の不審死をきっかけに市民による政府抗議運動が加熱するイランで、家庭内で消えた一丁の銃をめぐって炙りだされる家族の本当の姿を描いたものだ。テヘランで国家公務に20年にわたって従事してきたイマン(ミシャク・ザラ)。反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を下すのが彼の仕事だったため、報復から家族を守る護身用の銃が支給される。だがある日、家庭内でその銃が消失。最初はイマンのずさんな管理による紛失と思われたが、やがて疑いの目は妻や2人の娘に向けられる。果たして誰がなんのために?予測不可能でスリリングな展開にイランの社会情勢が絡むリアルな内容なだけに、どんな結末が待ち受けているのか気になって仕方がない。そんな映画ファンが映画館に多数詰めかけたことが、今回の結果にはしっかり表れている。
そして、今週のランキングで最も異彩を放っている3位の『104歳、哲代さんのひとり暮らし』。本作は、広島県尾道市の自然豊かな山あいの町でひとり暮らしを続けている石井哲代さんの101歳から104歳までの日々を見つめたドキュメンタリーだ。小学校の教員として働き、退職後は民生委員として地域のために尽くしてきた哲代さん。83歳で夫を見送ってからは、姪や近所の人たちと助け合いながら過ごす彼女の生活は、いりこの味噌汁を作り、家の周りの草をとり、お茶を飲んで語り合うささやかなものだが、そこには情報過多な生活に翻弄されがちな私たちが失ってしまった本当の幸福の姿が。そんな哲代さんから、健やかに生きるヒントを学びたいと思っている人たちが急増しているに違いない。
5位の『コメント部隊』は、『誠実な国のアリス』(15)で韓国社会を風刺した韓国の次世代監督アン・ググジンが国家情報院の世論操作事件が題材の同名小説を映画化した緊迫のクライム・スリラー。誤報を出し、停職処分になった社会部記者イム・サンジンの前に、謎の情報提供者が現れる。自分のことをネット操作を主導するコメント部隊「チームアレブ」のメンバーだと主張する彼は「金を出せば、真実を嘘に、嘘を真実にかることができる」と言うが…。現実世界でもSNSが社会を動かすようになっているだけに、本作の物語を無視することはできない。しかも、主演が『犯罪都市 THE ROUNDUP』(22)やNetflix「殺人者のパラドックス」(24)などで知られる韓国の人気俳優ソン・ソックで、キム・ソンチョル、キム・ドンフィといった期待の新星が脇を固める魅力的なキャスティング。タイムリーなテーマに現代を生きる俳優陣が挑んでいることが、今回の動員につながったのだろう。
続いて、今週末に公開予定のミニシアター映画をピックアップ!2月21日(金)からまた新たなホラー&スリラー作品が登場。『SKINAMARINK/スキナマリンク』は北米で異例の大ヒットを記録し、「史上最も恐ろしい映画」「本能的な恐怖を思い出す」とネット上で賛否両論を呼んだ最恐のイマジネーション・ホラー。現実と悪夢の境界を彷徨うような実験的な映像で最も深い恐怖へと突き落とすというから、ホラー映画ファンは間違いなく狂喜するに違いない。また、アカデミー賞俳優ラッセル・クロウが主演した『ザ・エクソシズム』は王道の悪魔祓いスリラー。あのオカルト映画の金字塔『エクソシスト』(73)でカラス神父を演じたジェイソン・ミラーの息子ジョシュア・ジョン・ミラーが、災いに取り憑かれたような父の実人生も投影させ、『エクソシスト』へのオマージュも散りばめたというから興味深い。
公開規模は小さいものの、映画ファンに愛されて続け話題性の高い良質な映画作品を鑑賞できるミニシアターに足を運んでみてはいかがだろうか。ちなみに、現在全興連ミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」では、クラウドファンディングやキャンペーンなどミニシアターを支援する様々な取り組みを実施中!作品を楽しむだけでなく、支援するという方法でミニシアターに触れてみてほしい。
文/イソガイマサト
詳細:https://moviewalker.jp/special/minitheater/
ミニシアター支援プロジェクトに関するお問い合わせ:全興連ミニシアター支援事業運営事務局(株式会社ムービーウォーカー内)minitheater@moviewalker.co.jp