アートとしての映画に陶酔させる超大作『ブルータリスト』など週末観るならこの3本!

コラム

アートとしての映画に陶酔させる超大作『ブルータリスト』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ハンガリー系ユダヤ人建築家の数奇な半生を描くヒューマンドラマ、音楽原作キャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”初の映画化、新鋭の映像作家が手掛けたイマジネーション・ホラーの、個性あふれる3本。

アートとしての映画に陶酔させる…『ブルータリスト』(公開中)

【写真を見る】主演を務めるのは『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディ(『ブルータリスト』)
【写真を見る】主演を務めるのは『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディ(『ブルータリスト』)[c] DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. [c] Universal Pictures

上映時間は3時間35分。その長さにひるむ人も多いだろうが、冒頭からストーリーの流れに心地よく身を任せられる。そんな映画のマジックを実感できる超大作だ。途中で15分の休憩が入るので、トイレの心配も不要。第二次世界大戦のホロコーストを逃れ、ヨーロッパからアメリカへ向かったユダヤ人建築家のラーズロー。冒頭のニューヨーク到着シーンから映像には過酷さが充満し、そこから30年におよぶ激動の運命に、観ているこちらは時に呆然と衝撃を受け、時に切実に感情移入しながら寄り添うことになる。

長尺なだけに記憶に残るシーンも多数だが、他の映画と明らかに異なるのは、視覚的“カッコよさ”だ。主人公が建築家ということで彼の手がけるデザインはもちろん、たとえば映画のクレジットの出し方など、随所にクールな仕掛けがほどこされ、アートとしての映画に陶酔させる。子役から俳優として活躍し、監督に転身したブラディ・コーベットは、長編3本目の本作で堂々たる演出力と先鋭的センスを鮮やかに融合。ラーズロー役のエイドリアン・ブロディは、史上最年少でアカデミー賞主演男優賞を受賞した『戦場のピアニスト』(02)と比較したくなる役どころなので、一人の俳優の“進化”を感じるうえでも映画ファンには必見と言える。(映画ライター・斉藤博昭)

キャラクターたちがバトル前後に交わすセリフはエモさ満点…『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(公開中)

日本初のインタラクティブ映画となる『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
日本初のインタラクティブ映画となる『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』[c]ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie

木村昴、浅沼晋太郎、速水奨など人気声優が総勢18名の個性豊かなキャラクターを演じ、6チームに分かれて熾烈なラップバトルを繰り広げる「ヒプノシスマイク」。2017年9月に始動したキャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”を原作とし、これまでコミック、ゲームアプリ、舞台、テレビアニメなどメディアミックスで展開して来た同作が、日本初となる観客参加型「インタラクティブ映画」として公開。

ストーリーは、中王区“言の葉党”への挑戦権を賭け、イケブクロ、シンジュク、ヨコハマなど6つのディビジョンが、ファイナルディビジョン・ラップバトルを繰り広げるというもの。バトルの勝敗は観客がスマホで投票し決定、リアルタイムで展開が変わる。投票回数は上映中5回あり、物語のルートは全48通り、エンディングは7通り。

ライブシーンがほとんどではあるが、キングギドラ、KICK THE CAN CREW、HOME MADE家族、Creepy Nutsらが手がける全16曲の新曲を映画館の上質な音響で楽しめる他、関係性の深いキャラクターたちがバトル前後に交わすセリフはエモさ満点。これら新曲とセリフ全てをコンプリートするためには、一体何回観に行けばいいのやら、嬉しい悲鳴が各劇場から聞こえて来そうだ。(ライター・榑林史章)

観ているこちらも闇に吸い込まれていく…『SKINAMARINK/スキナマリンク』(公開中)

多くのメディアが2023年のベストホラームービーに挙げた『SKINAMARINK/スキナマリンク』
多くのメディアが2023年のベストホラームービーに挙げた『SKINAMARINK/スキナマリンク』[c] MMXXII Kyle Edward Ball All Rights Reserved

ホラーの分野では低予算の自由度ゆえ、ときに野心的な手法の作品が生まれるが、本作はまさにそれ。真夜中に目覚めた幼い兄と妹が気づくと、両親も家のドアも消えていた。いったいなにが起きたのか?ザラついた粒子の映像がとらえるのは壁や天井、カーペット、テレビ、ベッドといった、ごく普通の生活空間やアイテム。そして子どもたちを待ち受ける暗闇だ。

セリフに状況説明を一切させず、それらを淡々と積み重ねていくのだから、観ているこちらも闇に吸い込まれていくよう。時折聞こえる両親の声や、おほろげに映るそれらしき姿、そして誰かわからない魔物らしきもの呼び声も不気味としか言いようがない。これはスゴい!(映画ライター・有馬楽)


映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

関連作品