いま韓国映画業界は、リバイバル上映ブーム!ターセム・シンに岩井俊二…韓国の映画ファンに刺さった“色あせない名作“は?
韓国映画業界にていま最も話題になっているのは、2024年に引き続き、今年も勢いがすごい“リバイバル上映”ブームである。ジャンルも制作国もリバイバル上映されるきっかけもバラバラだが、なかには初公開のときより多くの観客を集めたり、ボックスオフィス上位にランクインしたりする作品も少なくない。いま韓国ではどんなリバイバル上映作品が注目されているのか、なぜここまでリバイバル上映ブームが続いているのか、紹介したい。
「必ず映画館で観るべき」という口コミが広がり、奇跡の韓国イベントまで開催
韓国で16年ぶりにディレクターズ・カット版でリバイバル上映されている、ターセム・シン監督の『落下の王国』。8週間にわたって本作が動員した観客数は10万人で、2008年に韓国で初公開されたときの約5倍にいたる数値である。予想を遥かに上回る韓国ファンの熱烈な応援に支えられ、ターセム・シン監督は、2月5日に初の韓国イベントを開催。観客との会話(GV)や舞台挨拶など、すべてのイベントが1分で完売され、滞在日数を1日増やすほどの人気っぷりを見せた。
『落下の王国』が韓国でこういった異例の記録を更新した原動力は、“アナログの力”だと評価されている。映画の撮影で大ケガを負い人生に絶望したスタントマンのロイが、同じ病院に入院している少女アレクサンドリアと出会って起こる意外な出来事を描く本作は、ほぼCGを使っていない、秀麗な映像が見どころ。デジタル復元作業でさらに高画質に本作について、「必ず映画館の大きなスクリーンで観るべき」「IMAXで観たほうがいい」「OTTが流行っている時代だか、この作品には劇場でしか体験できない感動がある」などの口コミが広がったのだ。
世界24か国の名所を背景に本作を撮影したターセム・シン監督は「世の中に長く残る映画を作りたかったので、CGを使いたくなかった。 CGのない映画は間が経っても古く見えないので、20年近くの月日が経ったいまでも観客の心に響くのだと思う」とコメントしている。
日本の名作映画、時間が経っても韓国で大人気
公開30周年を迎えた『Love Letter』も存在感を放っている。韓国での9回目のリバイバル上映にもかかわらず、8万人以上の観客を動員し、衰えない人気を誇っているのだ。とくに今回は、いろんな年齢層の観客が集まっているのが特徴。本作への思い出や愛着を持っている世代だけでなく、SNSや動画サイトのショートフォームコンテンツを通じて「お元気ですか」という名セリフを初めて知った10~20代の若い観客も映画館に足を運んでいる。
リマスターされた映像美、誤訳が修正された字幕、リバイバル上映を記念して発売された様々なグッズも観客層をさらに広げる要因となった。韓国人が最も愛する日本人監督の1人である岩井俊二は、「『Love Letter』は私の人生で二度とないほど良い結果を出すことができた作品です。いまでも初めて公開したあの頃が夢のように感じられ、実感が湧きません。おかげでいまも作品を作り続けているので、韓国のファンに感謝しています」と明らかにした。
韓国でリバイバル上映され、大成功をおさめた日本の映画を挙げるとしたら、『余命10年』を欠かせない。2023年に韓国で初公開され、14万人の観客を動員した『余命10年』は、翌年のリバイバル上映で42万人の観客を動員し、上半期のインディーズ・芸術映画ランキング1位を獲得した。
『余命10年』のリバイバル上映を担当した韓国の配給会社BY4M STUDIOが、映画だけでなく原作小説の宣伝をも積極的に行ったり、本国で大人気のシンガーソングライター・10cmが参加した本作とのコラボ音源をリリースするなど、映像とテキスト、音楽を組み合わせたマーケティング戦略を実行したのも興行成功のキーとして分析されている。