『リボルバー』に主演したチョン・ドヨンが明かす俳優同士のケミストリー「チ・チャンウクさんの演技がインスピレーションをくれた」

『リボルバー』に主演したチョン・ドヨンが明かす俳優同士のケミストリー「チ・チャンウクさんの演技がインスピレーションをくれた」

チ・チャンウクとの撮影秘話「彼は貪欲な天性の俳優」

女性たちの魅力が際立つ一方、登場する男性たちは、女性に対してトキシックであったり、また嘘つきであったりと、情けない姿で描かれている。トラブルメイカーのアンディ(チ・チャンウク)、私怨からスヨンを憎悪する元同僚の刑事ドンホ(キム・ジュンハン)、自分の利益だけを優先するチョ社長(チョン・マンシク)、そしてスヨンに罪を肩代わりさせたにもかかわらず、最後まで守れなかった恋人。良くも悪くも人間臭く、ある意味で立体的な人物たちだ。チョン・ドヨンは分け前を調達する約束を破ったアンディのバーに乗り込むシーンで、初共演のチ・チャンウク相手にかなり体を張ったという。

ハードなシーンの撮影をこなしたチ・チャンウク、イム・ジヨンと笑顔の1枚
ハードなシーンの撮影をこなしたチ・チャンウク、イム・ジヨンと笑顔の1枚[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

「初めはお互いにぎこちなかったんですが、それは私がチ・チャンウクさんという俳優をあまり知らなかったからだなと実感しました。撮影をしている時に彼からものすごいエネルギーを感じたんです。彼の演技が、スヨンが持つ復讐心に似た感情のインスピレーションをたくさんくれました。チ・チャンウクさんって本当にかっこよくて優しくて、そういう役回りも多いから『リボルバー』は大変だったでしょうね。アンディというキャラクターでは、チ・チャンウクさんはご自身の内面のある一部を取り出して見せてくれたのかもしれませんし、とにかく良い演技をすることに対して貪欲な天性の俳優。また共演したいですね!」

「感情が暴力的にぶつかりあうノワール」で“リボルバー”が象徴するものとは?

作品のタイトル『リボルバー』は、出所したスヨンが入手した一挺のリボルバーのこと。実はこの銃は、劇中でかなり特異かつ象徴的な登場をしている。この使われ方を巡って「(製作会社の)サナイピクチャーズの代表は『信じられないよ』とよく仰っていました」と笑いながら話す。

タイトルとなったスヨンのリボルバーの意味にも注目したい
タイトルとなったスヨンのリボルバーの意味にも注目したい[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.


「たしかにそうなんですが、私としては、この作品がほかのノワールと差別化できるとしたら、アクションを使った肉体的なものというより、むしろ感情がぶつかるものが暴力的であることだと思いましたし、監督も同じことを考えていらっしゃいましたね。誰かを殺せという意味でリボルバーを渡され、受け取ったスヨンでしたが、彼女は自分の意思とは関係のない他人の意思で殺人者になりたくなかったんじゃないでしょうか。不正を働いた罪を償ったのにまた罪を犯すのではなく、自分のやり方で、正当に自分の分け前を要求している。おそらくスヨンにとってリボルバーは彼らを殺すためというのではなく、ただの警告の道具なんではないでしょうか。 出所してきたスヨンが復讐したい人間たちを銃で殺してお金を取れば済む話ではあるんですが、彼らが望んで作った枠組みにとらわれず、ハ・スヨン自身のやり方を選んで貫いたんだと思います。作品のリボルバーにはそういう意味があると思うんです」。

長いキャリアの中で変わったこと、変わらないこと「素顔の私と俳優チョン・ドヨンは分けられない」

チョン・ドヨンの俳優生活は1992年のドラマ「われらの天国」でスタートし、スクリーンデビューとなった『接続 ザ・コンタクト』(97)が高く評価された。長いキャリアを振り返った時、演技を始めた時と現在とで変化したことや、逆に今なお変わらず持ち続けている思いを聞いた。「今も変わらないのは、作品を選択する時の優先順位はシナリオが最も高いということです。私自身が脚本に納得できるかどうかですね」と話す。さらに「実は…役者になったばかりの頃は、この仕事をそんなに愛していなかったと思います。それが一番大きく変わったところじゃないでしょうか」と、“演技を愛し、演技に愛されている”チョン・ドヨンとしては意外なことを口にした。

演技への情熱を感動的に語ってくれたチョン・ドヨン
演技への情熱を感動的に語ってくれたチョン・ドヨン[c] MANAGEMENT SOOP

「会社員のほうが稼げましたし、おもしろかったんです。ところが演技をしているうちに、心から俳優という仕事を愛するようになったんです。以前は『作品がなければほかのことをすればいいかな。何でも上手くやれるはず』と思ったりしましたが、今は俳優という仕事を愛していて、演じることを切望しています。素顔の私と俳優チョン・ドヨンとを分けては考えられない。演技ができなくなるなんて想像してしまって、怖くなったりします。これからどうなるかは分かりませんが、私ができることは精一杯やりたいです。人って常に後悔しないわけじゃないですけど、後悔を減らすために努力していますし、これからもそうするつもりです」。

取材・文/荒井 南


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