韓国ノアール史上、最も狂気的なシリアルキラーの誕生…『デビルズ・ゲーム』チャン・ドンユンの怪演に注目

韓国ノアール史上、最も狂気的なシリアルキラーの誕生…『デビルズ・ゲーム』チャン・ドンユンの怪演に注目

3月7日(金)に公開される注目の韓国ノワール『デビルズ・ゲーム』。本作にて最も凶悪なシリアルキラーを演じたチャン・ドンユンを紹介する。

【写真を見る】チャン・ドンユン演じる狂気のシリアルキラー、ジニョク
【写真を見る】チャン・ドンユン演じる狂気のシリアルキラー、ジニョク[c] 2023 THE CONTENTS ON & CONTENTS G All Rights Reserved.

近年の韓国映画やドラマに外せないジャンルとなったサイコスリラー。これまで『チェイサー』(08)や『隣人-The Neighbors-』(12)、『目撃者』(18)、『殺人鬼から逃げる夜』(21)などヒット作が次々と公開されている。作中で猟奇的殺人犯を演じたことで一躍名を馳せた俳優も多く、悪役を演じてみたいと憧れの存在にもなった。

『チェイサー』は『哭声/コクソン』(16)のナ・ホンジン監督の長編デビュー作。精巧に作り込まれた脚本のもと、元刑事とサイコパスの対決がダイナミックに展開され、容赦なく残虐な描写もありつつ、人間の愚かさや交錯する人間模様を見事に描きだした。女性を監禁し次々と残虐な方法で殺害を繰り返す猟奇的連続殺人犯チ・ヨンミンを演じた、ハ・ジョンウによる狂気さを表現した高い演技力も注目を集め、彼がブレイクするきっかけにもなった。自宅を訪ねてきた自治会の夫婦を何気なく殺し、逃げた女性をどんどん追い詰めていくなど、見た目はごく普通の青年なのに次第に狂気がむきだしになっていき、なにを考えているかわからないそのサイコっぷりはトラウマ級だった。

そんなハ・ジョンウから殺人鬼としての演技の秘法を教えてもらったというキム・ソンギュンもまた、『隣人-The Neighbors-』で残酷な殺人鬼リュ・スンヒョク役を演じ、韓国映画業界に強烈な存在感を残した。ハ・ジョンウから「絶対に自分が犯罪者だと思わずに、人を殺す時も殺していると思わずに自分は日常的な行動をしていると思いながら演じればいい。まるでリンゴを取るように」というアドバイスをもらったそうで、その言葉を体現するような一糸乱れぬ殺人鬼の表情はジャック・ニコルソンを彷彿させるとも。キム・ソンギュンの微笑みがより恐怖感をあおって悪役俳優のイメージを植え付け、その年の大鐘賞映画祭新人男優賞を受賞した。

そして2023年には『オオカミ狩り』が公開され、極悪非道な第一級殺人犯ジョンドゥというキャラクターが韓国中を驚愕させた。殺人犯ジョンドゥを演じたのはソ・イングク。悪役を演じたかったという彼は、これまで痩せている悪役は多く見てきたので、「僕は、残忍さに加えてカリスマ性のある人物をイメージしたんです。それを表現するには、やはり体を鍛えて体重を増やした方がいいんじゃないか」と監督に提案し、1日6食で16キロ増量し、肉体改造を行うほど役への並々ならぬ努力と想いがあったという。その甲斐あって、鍛え上げた肉体と全身に纏ったタトゥー、コンプレックスだったという四白眼の目の演技力も加わってより強いインパクトを残し、血まみれになりながら相手の耳を噛みちぎる怪物っぷりはまさに超凶悪犯そのもの。船上でのアクションもこなしつつ、大胆なイメージチェンジに成功した。

この『オオカミ狩り』でナイフ使いの寡黙な犯罪者イ・ドイルを演じたのがイケメン注目俳優のチャン・ドンユン。最新の韓国ノアール『デビルズ・ゲーム』でも狂気のシリアルキラー、ジニョクを演じており、その狂気に満ちた演技力に注目が集まっている。

『オオカミ狩り』の役柄とは一味違って、ジニョクは無差別殺人を行うだけでなく、死体を解体している動画を闇サイトに上げる殺人鬼集団のリーダーでもある。その異様な役柄を演じるにあたり、チャン・ドンユンは「一般的な見せ方では無い方向で行う」と語っており、目つきやセリフの言い方のトーンに気を使ったという。その成果もあり、殺人鬼ジュニョクがナイフを持って獲物を狙う視線には、観客をゾッとさせる真実味が備わっている。さらに、ジニョクは自身を追う刑事と体が入れ替わってしまうため、一人二役という難しい役どころでもある。これについては、「殺人鬼と刑事でのキャラクター間でのギャップをできるだけ大きくなるように演じ分けた」と説明している。


次世代のシリアルキラーを見事に演じたチャン・ドンユンの怪演に圧倒される『デビルズ・ゲーム』。これまでの爽やかなイメージを脱ぎ捨てた、観る者を一気に作品の世界への引き込むサイコパスぶりに戦慄してほしい。

文/平尾嘉浩

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