『エクソシスト3』キャストが違う“別バージョン”が初公開!4KレストアUHDを開封レビュー
少女リーガンに取り憑いた悪魔と2人の神父の壮絶な死闘を描き、1970年代に隆盛を極めたオカルトホラー映画ブームを牽引。世界中で“現象”ともいえる大ヒットを記録し、ホラー映画としては異例のアカデミー賞作品賞にノミネートされた『エクソシスト』(73)。その原作者であるウィリアム・ピーター・ブラッティが、自ら監督と脚本を務めた『エクソシスト3』(90)の4Kレストア UHD+Blu-rayデラックス版、4Kレストア Blu-rayデラックス版、Blu-rayが、2月26日にリリースされた。
今回のパッケージ化の最大の目玉となっているのは、長年にわたって“存在しない”とされてきた幻のオリジナルカット版『THE EXORCIST III: LEGION』(以下『レギオン』)が満を持して初収録(デラックス版商品のみ)されたことだ。そこで本稿では、『レギオン』とはどのようなバージョンなのか紹介しながら、本商品の内容を詳しくチェックしていこう。
再撮影の末にお蔵入り…凄みと芸術性が増した幻のオリジナル
ブラッティが特に思い入れのあるキャラクターだと明かしている、キンダーマン刑事を主人公にした本作。なお、第1作で同役を演じたリー・J・コッブは1976年に亡くなっており、本作では『パットン大戦車軍団』(70)でアカデミー賞を受賞辞退したことで有名なジョージ・C・スコットが演じている。
1990年、アメリカ東部の街で少年の首なし死体が発見される。その捜査にあたったキンダーマンは、15年前に起きた同じ手口の連続殺人事件“双子座殺人事件”を思い起こすのだが、その犯人はすでに処刑されていた。さらに2人の神父が同じように殺害され、そのうち1人はキンダーマンの親友のダイアー神父(エド・フランダース)だった。そんななか、ある精神科医から担当する患者のなかに自分が「双子座殺人鬼」だと名乗る男がいることを告げられたキンダーマンは、その人物に会いに行くことに。
第1作の大ヒットの後、リーガンに再び悪魔が取り憑くという内容の『エクソシスト2』(77)が製作されたが、興行的にも批評的にもまったく振るわず。同作の執筆依頼を断っていたブラッティは、その出来に不満を抱き、自ら新たな続編のアイデアを構築したという。ウィリアム・フリードキン監督との再タッグで映画化を目指したものの、フリードキンがプロジェクトから去ったため断念し、1983年に「Legion」というタイトルで小説として発表した。
その後、モーガン・クリーク・プロダクションが小説の映画化権を獲得。当時すでに『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』(80)で監督業に進出していたブラッティが自らメガホンをとることになり、撮影は大きな問題もなく進行。しかし、完成した作品の試写を観たモーガン・クリークの上層部は首を縦に振らず、制作費を上乗せしたうえでブラッティに再撮影を要求したという。
その要求の内容は、第1作でカラス神父役を演じ、今作でも当初は“双子座殺人鬼”と患者Xを演じる予定だったジェイソン・ミラーを復帰させること。そして「エクソシスト」らしい悪魔祓いのシーンを追加すること。ブラッティは「不必要で作品の本質を変えてしまう」と憤ったものの、やむなくそれを受け入れ、タイトルも『レギオン』から『エクソシスト3』に改題され劇場公開。興行的に伸び悩び、批評家からの評判もまずまずに終わった。
結果的にお蔵入りとなってしまった『レギオン』。ファンの間では決して観ることのできない“幻のバージョン”として語り継がれていたのだが、2015年頃に当時の関係者が保管していた作業用VHSなどが発見され、復元が進められた。そして2017年にブラッティが亡くなる直前にその作業が完了。海外ではすでにBlu-rayに収録されていたが、今回満を持して字幕がつけられた状態で日本初上陸を果たした。
大きな違いとしては、先述の追加要素であるラストの悪魔祓いシーンがないこと。また、劇場公開版ではジェイソン・ミラーが患者Xを、ブラッド・ドゥーリフが双子座殺人鬼を同じシーンのなかで入れ替わるように演じていたが、『レギオン』ではどちらもドゥーリフが一人二役で見事に演じ分けている。『カッコーの巣の上で』(75)で注目を浴び、「チャイルド・プレイ」のチャッキー役で有名なドゥーリフの、卓越した声色の使い分けなど、彼の俳優としての凄みがより堪能できるバージョンとなっている。
なお『レギオン』本編は、4K修復された劇場公開版の素材とつなぎあわせるかたちで収録されているので、画質や画面比が切り替わったところが劇場公開版との違いであると一目瞭然。それだけでなく、オープニングからラストに至るまでシーンの順番が入れ替わっているところも多数あるので、そこは両方のバージョンを見比べながら確認するのがいいだろう。
発売中
定価:12,980円(税込)/11,800円(税抜)
【UHD1枚+Blu-ray2枚 仕様】1990年/アメリカ/カラー
DISC-1:Ultra HD Blu-ray [劇場版]
本編110分/3層(100GB)/COLOR/アメリカンビスタサイズ(1.85:1)[3840×2160p]/HEVC
音声4)1:英語DTS-HD Master Audio 5.1chサラウンド
2:英語DTS-HD Master Audio 2.0chステレオ
3:日本語吹替(VHS版)ドルビーデジタル 2.0chステレオ
4:日本語吹替(フジテレビ版)ドルビーデジタル 2.0chモノラル
字幕2)1:日本語字幕(英語本編音声用)
2:日本語字幕(日本語吹替用)
DISC-2:Blu-ray [劇場版]
本編110分+特典計82分/2層(50GB)/COLOR/アメリカンビスタサイズ(1.85:1) [1080p Hi-Def] ※一部特典映像を除く/MPEG-4 AVC
音声4)1:英語DTS-HD Master Audio 5.1chサラウンド
2:英語DTS-HD Master Audio 2.0chステレオ
3:日本語吹替(VHS版)ドルビーデジタル 2.0chステレオ
4:日本語吹替(フジテレビ版)ドルビーデジタル 2.0chモノラル
字幕2)1:日本語字幕(英語本編音声用)
2:日本語字幕(日本語吹替用)
DISC3:Blu-ray [オリジナル・カット“レギオン”]
本編105分+特典104分/2層(50GB)/COLOR/アメリカンビスタサイズ(1.85:1) [1080p Hi-Def]/MPEG-4 AVC
音声2)1:英語DTS-HD Master Audio 2.0chステレオ
2:英語インタビュー音声DTS-HD Master Audio 2.0chステレオ
字幕1)日本語字幕
発売元:是空/TCエンタテインメント
販売元:TCエンタテインメント