『キャプテン・アメリカ:BNW』が北米V2も、下落率はMCUワースト3入り…週明けのアカデミー賞を前に、近年の作品賞受賞作の興収傾向をチェック!
先週末(2月21日から2月23日まで)の北米興収ランキングは、前週に引き続きマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(日本公開中)が首位を獲得。2位の作品にダブルスコア以上の差をつけている点では“危なげない勝利”といえるのだが、決して手放しで褒められる数字ではないことには留意が必要だ。
週末3日間の興収は2817万93ドル。オープニング週末の興収が8884万ドルだったので、下落率は68.3%。つまり初週末の31.7%しか稼げていない、前傾型の興行ということがよくわかる。歴代のMCU作品35本の初週末から2週目末への下落率を見てみると、『マーベルズ』(23)の78.1%、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(23)が69.9%だったので、それに次ぐ3番目の大きさとなる。
また、2週目の週末時点での累計興収1億4117万ドルという数字も、同時点での比較でMCU歴代27位。オープニング週末興収が同歴代24位だったので、勢いはすでに失速気味。MCU前作『デッドプール&ウルヴァリン』(24)がわずか3日で成し遂げた興収2億ドルに乗ることができるかも際どくなってきている。ちなみにMCUの“フェーズ5”は、現在まで興行的成功と失敗が交互にきている。次の『サンダーボルツ*』(5月2日日本公開)の成否がアメコミ映画の今後をうらなう大きな局面となりそうだ。
一方、2位に初登場を果たしたのは『ロングレッグス』(3月14日日本公開)のオズグッド・パーキンス監督がスティーヴン・キングの同名短編を映画化した『The Monkey』。元々はフランク・ダラボンが2000年代後半に制作する予定だった原作の権利をジェームズ・ワン率いるアトミック・モンスターが獲得して実現した本作は、サルのおもちゃの恐怖を描くホラーコメディ。初日から3日間の興収は1400万ドルと、先述の『ロングレッグス』と比較すると63%のオープニングとなっている。
批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は79%で観客からのそれは59%。こちらも『ロングレッグス』のそれぞれ86%と61%には及ばなかったが、安定感はまずまず。パーキンス監督と配給会社NEONのタッグは『ロングレッグス』に続いて2作目となるが、年内には次なる新作ホラー『Keeper』も待機している。第97回アカデミー賞で脚光を浴びそうなNEONのホラー部門を牽引する作り手として、パーキンス監督は今後も重宝されることになるだろう。
さて、週明けにはいよいよ第97回アカデミー賞の授賞式が行われる。作品賞候補作それぞれの累計成績を見ると、今年は『ウィキッド ふたりの魔女』(3月7日日本公開)と『デューン 砂の惑星PART2』(24)の2本だけが興収1億ドルを超えており(前者はすでに4億7000万ドル超)、5000万ドルで線引きをしても『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(日本公開中)、3000万ドルまで下げても『教皇選挙』(3月20日日本公開)しか追加されない。
前年、作品賞に輝いた『オッペンハイマー』(23)は歴代の作品賞受賞作で第4位の高興収となる累計興収3億ドル超えのメガヒットで、その前の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)は累計興収7700万ドル。コロナ禍の2年は例外としても、ここ数年は比較的興行的に成功している作品にオスカーが渡っている傾向が見受けられる(第92回の『パラサイト 半地下の家族』は授賞式時点で3500万ドルほどだったが、その後5000万ドルを突破している)。
今年は作品賞受賞の可能性が高いとされている『ブルータリスト』(日本公開中)も『ANORA アノーラ』(日本公開中)も、現時点で北米累計興収1500万ドルほど。授賞式時点で興収2000万ドルに届いていない作品が受賞することになれば、(コロナ禍の2年を除き)『ハートロッカー』(09)以来15年ぶりとなる。はたしてどんな結果になるのか、日本時間の週明け月曜日を楽しみに待とう。
文/久保田 和馬