シリーズ最高傑作、「涼宮ハルヒの消失」はここが面白い!
原作小説は累計600万部を突破。テレビアニメは深夜枠、それも独立UHF局での放送にもかかわらず全国区で人気を呼び、秋葉原ではハルヒダンスを踊るコスプレイヤーが男女問わずに続出、社会現象にまで発展した「涼宮ハルヒ」シリーズ。ファンの間で最も評価が高く、ハルヒ人気に大いに貢献したYouTubeではファンの手による渾身の“予告編”が流れるほどに映画化が待望されていたのが、第4作「涼宮ハルヒの消失」である。
そもそも「涼宮ハルヒ」とはどういう話なのか。無自覚に世界や未来を改変する能力をもつ女子高生・涼宮ハルヒ。「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい」というハルヒの発足したSOS団には、本当に宇宙人、未来人、超能力者が集ってくる。彼らはハルヒが世界の法則を変えないよう見守る使命を帯びているが、ハルヒ本人は自分の能力を知らない。すべてを観察しているのは、団員のひとりであり唯一平凡な人間キョンだけだった……。というのがハルヒ・ワールドの設定だ。
しかし、「消失」では、語り手キョンの知っている涼宮ハルヒの存在しない、非日常的な出来事のない平穏な世界が舞台となっている。なぜハルヒはいないのか? 他の団員はどうなったのか? 悩んだ末、キョンはハルヒとSOS団のいる日常を取り戻すために自ら動き出す。たとえ世界を変えることになっても――。
パラレル・ワールドやタイムスリップの用い方には大長編ドラえもんの名作『〜のび太の魔界大冒険』(84)と『〜のび太の大魔境』(82)から、また設定には『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84)からの影響がうかがえる「消失」は、シリーズの転換点でもある作品だ。
これまでずっと受身だったキョンが、自分の立ち位置を変えるか否かを突きつけられ、“自らの意思で空回りするバカ騒ぎ”を選び取る決意をする。同時に、涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希、それぞれの女性たちへの感情も自覚する。第1作「涼宮ハルヒの憂鬱」では非日常に否応なく巻き込まれていたキョンが、「消失」では自分の意志で非日常を選ぶまでに変化したことが描かれる。
読み応え感たっぷりの原作が果たして映画版ではどう演出されているか? 発売が延期している原作最新刊とのリンクはひょっとしてあったりするのか? 2月6日(土)、すべてが明らかになる!【映画ライター/皆川ちか】