藤竜也が撮影の“後遺症”を告白「無事生還しました」
第30回東京国際映画祭のマスタークラスで、『光』(公開中)の河瀬直美スペシャルトークイベントが、10月28日に六本木アカデミーヒルズのタワーホールで開催。河瀬監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた『東の狼』(2018年2月公開)の特別上映の前に、主演の藤竜也がゲスト登壇し、河瀬監督とのスペシャル対談が行われた。
『東の狼』は、キューバ人のカルロス・M・キンテラ監督による日本・イギリス・スイスの合作映画。藤竜也が、仕事も仲間も失った孤独な男アキラを演じた。彼は船乗り時代に訪れたキューバで恋に落ちた女性や、オオカミへの想いを巡らせていく。
藤はカルロス監督の意図を懸命にとらえようとしたそうだ。「カルロスは奈良を舞台にキューバで映画を撮るんだと宣言されていた。これはキューバの映画なんだ、と。だから、わからないこともたくさんありました。でも、当然ながらいろんなことが希望になっている。カルロスさんの中で、オオカミにはいろんな意味があるんじゃないかと思いました」。
キューバ人監督ということで、河瀬が「藤さんは、革命に対して何か感じられていました?」と質問すると、藤は大きくうなずいた。「革命はある種、血が流れていて凄惨なこと。でも、革命のロマンティシズムの印象をもっとも鮮やかに与えたのは、キューバのカストロさんであり、チェ・ゲバラさん。カルロスたちの時代に、父や祖母の時代がどう心に影響を与えたのかは想像ができない」と語った。
河瀬も「カルロスくんは、私たち日本人にはわからない感覚でディレクションをしていった。藤さんにとってすごい経験の1か月だったと思います」と撮影を振り返った。
ロケ地は奈良の東吉野で、藤はロケ地に単独で行ったそうだ。河瀬監督は「最初は、村人も『藤竜也さんが来てる!』とざわざわしてましたが、途中から村人?と思えるようになっていって。ちょっと行くとローソンがあって、そこが唯一の都会との接点でしたよね」と藤に言う。
藤は「10km先ですけどね。そこへ行くと少し都会に帰った感じがあり、正気を取り戻してから、また“不審なところ”へ帰っていくんです」と苦笑い。
河瀬も笑いながら「途中から表情、顔つきが変わっていらして。あの世界に取り込まれた感じがして、大丈夫かなと思いました」と言うと、藤は「ずっと後遺症があって、おかしくなっていましたが、無事に生還しました」と笑いを取った。
第30回東京国際映画祭は、10月25日から11月3日(木・祝)の10日間にわたり、六本木ヒルズをメイン会場に、EXシアター六本木、東京国立近代美術館フィルムセンター、歌舞伎座、東京国際フォーラムなどで開催中。豪華ゲストが舞台挨拶やティーチインなどに登壇する。【取材・文/山崎伸子】【取材・文/山崎伸子】