米話題作『第9地区』間もなく上陸!“ないない”尽くし、無冠映画の実力
スターなし、巨匠なし、バジェット(製作費)なし、おまけに脚本も原作なしのオリジナルという“無冠”映画ながら、全米では初登場1位の大ヒットを記録! おまけにアカデミー賞作品賞を含む主要4部門にノミネートされるなど、賞レースでも大奮闘を見せている驚異のSFアクション映画『第9地区』(4月10日公開)が、間もなく日本に上陸する。
物語の舞台は南アフリカ共和国。首都ヨハネスブルグにある日突然、正体不明の宇宙船が出現! 人類とバトルを繰り広げる…と思いきや、この映画はそう簡単に始まらない。故障した宇宙船に乗っていたのは、なんと憔悴しきった難民エイリアンたち! 人間たちは彼らを、とりあえず“第9地区”の仮設住宅に住まわせるというユニークな設定だ。
エイリアンとの共存―。一体それは人間社会にどんな影響を及ぼすのか? 次第に衝撃と混乱で息つくひまもない怒涛の展開へとなだれこむストーリーを、ニール・ブロムカンプ監督は手持ちカメラによる生々しい映像と、市民へのインタビュー、そしてニュース映像を駆使して、リアリティー満載の作品に仕立て上げた。
実は、本作の仕掛け人は『ロード・オブ・ザ・リング』(01〜03)シリーズのピーター・ジャクソン監督。もともとCMディレクターであったブロムカンプの腕を買っていたジャクソンは、彼と共同で人気ゲーム「HALO」の映像化を試みたものの企画が頓挫。だが、そこからブロムカンプのSF短編『アライブ・イン・ヨハネスブルグ』を長編映画化する本プロジェクトの話が持ち上がったのだという。
とはいえ、知名度のない監督やキャストでは、話題を呼ぶのは難しい。そこで、劇中に登場するエイリアン隔離用の標識=“FOR HUMANS ONLY”“NO HUMANS ALLOWED”を、ビルボード広告やバス停のベンチなど至る所に使用。結果、エイリアンの存在を大胆にアピール、一躍話題をさらったと共に、サンディエゴで行われたコミコン上映が決定打となり、その評判は口コミで広がった。ちなみに物語の中では“エビ”と呼ばれてしまうこのエイリアンたち。どんなキッチュな姿をしているかは、見てのお楽しみだ。
本作をはじめ、スティーブン・スピルバーグ監督を驚愕させたオーレン・ペリ監督の『パラノーマル・アクティビティ』(09)や、本作と同じくアカデミー賞にノミネートされたリー・ダニエルズ監督の『プレシャス』(GW公開予定)など、最近は監督が無名ながら評価を集めている作品が多くなり、ネームバリューよりも作品のクオリティーが際立つのは頼もしい限り。いまやアカデミー賞作品賞を獲得して本当の“冠”がついてしまいそうな『第9地区』も、絶対に見逃せない1本だ。【トライワークス】