世界中で大絶賛のストップモーションアニメに秘められた、日本への熱い想いとは…!?
世界最高峰のアニメスタジオ・ライカが日本を舞台に描き出した驚異のストップモーションアニメ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』。現在大ヒット上映中の同作から、ライカの職人魂を余すところなく感じることができる、エンドロール映像の一部が解禁された。
本作は、三味線の音色で折り紙に命を与え、自在に操ることができる少年・クボが、闇の魔力によって殺された両親の復讐を果たすため、面倒見の良いサルと、ノリが軽いクワガタを連れて、三種の武具を探す冒険に出るダークファンタジー。
第89回アカデミー賞では長編アニメーション賞候補にノミネートされ、ライカ作品の連続ノミネート記録を伸ばしただけでなく、名だたる超大作と肩を並べて視覚効果賞にもノミネート。他にもゴールデン・グローブ賞やアニー賞にもノミネートされるなど、世界中の映画賞を席巻してきた話題作だ。
今回解禁されたエンドロール映像では、精巧に作り込まれた人形たちではなく、まるで浮世絵や版画を連想させるような本格的な日本絵巻が展開。独特の絵柄で描き出されたキャラクターたちが、本作の物語をなぞるように、美しく描かれていくのだ。
1秒のシーンを描くために24枚のショットが必要となり、1週間で約3秒の映像しか制作できないストップモーションアニメの手法を用いて作り上げられた本編は、まるで本当に生きているかのような躍動を見せる人形たちの姿が魅力だった。一方で、このエンドロールはまた違った印象で、舞台となる日本の魅力を映し出している。両方を合わせて、まさに日本へのラブレターとも言える作品なのだ。
監督を務めたトラヴィス・ナイトは、本作の制作にあたり「黒澤明作品の影響が一番大きかったよ」と明かす。「彼の映画は1コマ1コマが絵画のようなんだ。構成、カット、動き、照明、シルエット、すべてを映画の中に取り入れようとしたよ」と、日本を代表する大監督、黒澤明へのオマージュを明かした。
さらに「映画の作り方だけでなく、実在主義や人間主義、ヒーローの概念も影響を受けた。とくに『わが青春に悔いなし』(46)は僕に訴えかけてきたね」と、黒澤が戦後最初に監督した、ファシズムの中で自らの信念を貫く女性の姿を描いた作品を例に出した。
さらに、引退を撤回して最新作を制作中の宮崎駿の名前を挙げたトラヴィス。日本アニメ界を代表する巨匠からも影響を受けたことを明かしたのだ。「彼は、自身が魅了されたヨーロッパ的なものを、自分のものにして、アートの中に織り込んでいる。それを僕は日本に対してやってみたかったんだ」と、宮崎作品を分析した上で、彼の創作アプローチの方法を踏襲したことを語った。
そして「僕にとって本当に長い間重要だった場所と文化について、僕なりの解釈を表現したかったんだ」と、日本に対する熱い想いがあることを告白したトラヴィス。そんな彼の熱意が、新たなインスピレーションを常に吸収していくライカの職人たちに、ポジティブに伝染していった。
衣装デザインを担当したデボラ・クックは、日本人デザイナー、イッセイ・ミヤケの技術を研究し、照明のディーン・ホームズは日本のドキュメンタリー作品を何作も鑑賞するなど、チーム全体で膨大な時間をかけて、日本文化へのリサーチを行なっていったのである。
そんな日本への愛情に溢れた本作。もしエンドロール映像にまで込められた職人魂に感服されたならば、本編のクオリティの高さと、世界屈指のクリエイターたちの熱量によって生み出された新たな日本の姿を劇場で目の当たりにしてほしい。
文/久保田和馬