“ピンク映画の黒澤明”の異名も!『キャタピラー』若松孝二監督の破天荒すぎる人生
世界三大映画祭のひとつで毎年2月に開催されるベルリン国際映画祭のコンペ部門に、若松孝二監督の新作『キャタピラー』(8月15日公開)が選ばれた。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』(07)などの重厚な作風で知られるも、かつては“ピンク映画の黒澤明”とも呼ばれた若松監督。その人物像を探ってみよう。
若松監督は宮城県に生まれ、高校2年で中退し上京。職人見習いや新聞配達、ヤクザの下働き(!!)などを経験した後、チンピラ同士のいざこざで逮捕され、拘置所に拘禁されるというなんとも破天荒な青春時代を過ごす。ちなみに、この時の体験が権力者への怒りに転換し、映画監督を目指す動機になったという。そして、テレビ映画の世界に身を投じ助監督となるものの、脚本の改変を求めたプロデューサーを殴り倒し、その場で解雇されてしまう。
その後、紆余曲折を経て、ピンク映画『甘い罠』(63)でついに映画監督デビューを果たす。作品は低予算ながらも、圧倒的な迫力の映像でピンク映画としては異例のヒットを記録。“ピンク映画の黒澤明”と呼ばれるようになる。人間の根源的な要素であるエロスと暴力をテーマに据えた衝撃的な作風や、強度を持った豪快な演出、意表を付く設定などが話題になり、それ以降もヒット作を量産するようになるのだ。
上記以外にも、とにかく武勇伝が数知れない破天荒な人物なのだが、それだけに懐は深い。過激で重厚な『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』を撮った後にテレビドラマの「東京少女」(BS-i、現・BS-TBS)や「ケータイ刑事」(TBS、BS-TBS)といった、軽いタッチの作品も手掛けている所がまた、若松監督の人柄を表していて面白い。
最新作『キャタピラー』は江戸川乱歩の「芋虫」を原作とした映画で、若松監督は「戦争はいろいろな人を不幸にする、ということを伝えたいし撮りたいのです」と訴える。若松監督の究極の反戦映画の出来栄えを、今から期待して待っておこう。【トライワークス】