“人を殺しかけた物”を収集!“戦争の英雄”の異常な心理状態

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“人を殺しかけた物”を収集!“戦争の英雄”の異常な心理状態

アカデミー賞の有力候補作品『ハート・ロッカー』(3月6日公開)は、観賞中に何度もかたずを飲んでしまう緊張感あふれる力作だ。イラク戦争が舞台でも、最前線で戦う兵士たちではなく、アメリカ軍爆発物処理班の兵士たちが描かれる。“ハート・ロッカー(Hurt Locker)”とは、“行きたくない場所 棺おけ”を意味する兵隊用語だが、極限状態にいる兵士たちの中には異常な心理状態になる者もいるようだ。

主人公は、『28週後...』(07)のジェレミー・レナー扮するジェームズ二等軍曹だ。主演よりも脇で光るタイプの俳優だし、命も顧みずガンガン危険を冒していくので、すぐに死ぬんじゃないか!?とドキドキする。でも、その緊迫感こそ、キャスリン・ビグロー監督の狙いである。

そんなジェームズが集めているのが“人を殺しかけた物”だ。例えば、それは“人間”に仕掛けられた爆弾の部品だったりしてかなり気持ちが悪く、同僚もドン引きだった。でも、彼はサイコキラーでも変態でもなく、これまで873個も爆弾を処理してきた“英雄”なのだ。

本作は、トミー・リー・ジョーンズ主演でイラク帰還兵の事件を描いた『告発のとき』(07)の原案提供者マーク・ボールが、イラク戦争で取材した内容に基づいている。だから、フィクションなのに実にリアル。何よりも「死と隣り合わせでも冷静でいられるのはどういう人間か?」というテーマにうなる。

衝撃的ラストには思わず絶句! 改めて戦争の罪深さをかみしめる。戦争映画という枠には収まらない傑作を絶対見逃さないで。【Movie Walker/山崎伸子】

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