第75回GG賞作品賞は『スリー・ビルボード』!今年のキーワードは「性差別からの脱却」
アカデミー賞へ向けた最も重要な前哨戦、第75回ゴールデングローブ賞の授賞式が現地時間1月7日に開催。飛び抜けた主役が不在とあり史上空前の大混戦を噂されている第90回アカデミー賞の体勢が徐々に見えてきた中で、同時にハリウッドを騒がせ続けているセクハラ問題も大きく浮き彫りとなった。
今回の授賞式で注目されていたのは、最多7部門でノミネートされた『シェイプ・オブ・ウォーター』(3月1日公開)と、6部門でノミネートされた『スリー・ビルボード』(2月1日公開)の一騎打ち。いずれも〈ドラマ部門〉で直接対決をすることとなった両者ではあるが、結果的には作品賞と主演女優賞、そして助演男優賞と脚本賞の4部門を獲得した『スリー・ビルボード』に軍配が上がった。
監督賞と作曲賞を獲得した『シェイプ・オブ・ウォーター』のアカデミー賞での逆転の可能性も捨てきれないとはいえ、これで『スリー・ビルボード』が今年の主役に躍り出るとの見方が有力となったのだ。奇しくも性犯罪を題材にした同作が、深刻な問題を抱えるハリウッドに変革をもたらすのではないかと期待を持たれていることが証明されたと言える。
しかも今回の授賞式では、一貫してハリウッドの性差別に対するアクションが目立った。揃って黒いドレスを身にまとった女優たちに、司会を務めたセス・マイヤーズのジョーク、監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロや〈ドラマ部門〉で主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドの力強いスピーチなど、随所で“性差別からの脱却”が今年のテーマとなっていることが見受けられたのだ。
中でも、作品賞のプレゼンテーターとして登場したバーブラ・ストライサンドは、自身が『愛のイエントル』(84)でゴールデングローブ賞監督賞に輝いてから34年間に渡り、女性監督が受賞していない現状について一連の性差別問題と重ね合わせ「タイムズ・アップ!」と宣言。あらゆる面において、性差別から脱却するための連帯を示した。
有力作品の一角として挙げられていた『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグが監督賞候補に挙がらなかった今回のゴールデングローブ賞。あと2週間後に発表される第90回アカデミー賞のノミネート発表では、どのような結果が待ち受けているのだろうか。
一方で〈ミュージカル・コメディ部門〉では、その『レディ・バード』(6月公開)が作品賞と主演女優賞を獲得し、ますます勢いを加速させている。今年に入ってから全米批評家協会賞を獲得するなど急上昇を見せている同作。アカデミー賞での『スリー・ビルボード』の最大のライバルとなるのは『シェイプ・オブ・ウォーター』か同作なのか、引き続き注目したい。
主要部門の受賞結果は以下の通り。
〈ドラマ部門〉
作品賞 『スリー・ビルボード』
主演男優賞 ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
主演女優賞 フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』
〈ミュージカル・コメディ部門〉
作品賞 『レディ・バード』
主演男優賞 ジェームズ・フランコ『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』
主演女優賞 シアーシャ・ローナン『レディ・バード』
〈共通部門〉
監督賞 ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』
助演男優賞 サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』
助演女優賞 アリソン・ジャーニー『アイ、トーニャ(原題)』
脚本賞 マーティン・マクドナー『スリー・ビルボード』
オリジナル作曲賞 アレクサンドル・デプラ『シェイプ・オブ・ウォーター』
オリジナル歌曲賞 「This is Me」『グレイテスト・ショーマン』
アニメーション賞 『リメンバー・ミー』
外国語映画賞 『女は二度決断する』(ドイツ)
セシル・B・デミル賞 オプラ・ウィンフリー
文/久保田和馬