ストップモーション・アニメだから味わい深い!心洗われる描写に大人の涙腺が決壊!?
「チェブラーシカ」、「ひつじのショーン」、日本の「こまねこ」など、ほのぼのした味わいで人気を博す“ストップモーション・アニメ”。近年はピクサー作品に代表される3Dアニメの台頭が続いていたが、ここにきてその表現技法が改めて脚光を浴びている。今回紹介したいのはスイス・フランス合作の『ぼくの名前はズッキーニ』(公開中)。全米の映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で、驚異の満足度100%を記録したその魅力に迫りたい!
本作に登場するキャラクターたちは、大きな瞳にヒョロ長い手足が特徴的。そのディテールは、どことなく『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)を思わせ、クセのある愛らしさを備えている。そんな登場人物たちが、原色に彩られたカラフルな世界で、活き活きと動き回る様は、見ているだけでもワクワクしてしまう!
しかし、辛口の批評家たちも心奪われた本作の一番の魅力は、その感動的な物語にある。主人公は、事故で母を亡くした9歳の少年“ズッキーニ”。孤児院での暮らしを通じて、ボス気取りの問題児とケンカしたり、恋に落ちた女の子と一緒に院を脱走しようとしたりと、子どもらしい日々を過ごしていく。
その反面、孤児たちの背景には、アルコール依存症の親や移民取締局に連行された家族、罪に問われる事件など、容赦のない境遇が暗い影を落とす。劇中では、人形たちの身振りや表情、ふとした“間”から、そんな問題に対する子どもたちの葛藤や戸惑いを丁寧に表現。アナログなアニメならではの深い感動を味わうことができるのだ。
可愛らしいビジュアルながら厳しい現実を描いたスイス人監督、クロード・バラスは「傷を抱えながらも必死に生きる子どもたちへのオマージュでもあります」と今作のテーマを説明。「誰も愛してくれない」と悲しむ孤児たちが慰め合い、強く生きようとする健気な姿には、思わず涙してしまうはず!
昨年公開された『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(16)や、5月に公開されるウェス・アンダーソン監督の最新作『犬ヶ島』などの大作も揃い、勢いを増すストップモーション・アニメ。なかでも『ぼくの名前はズッキーニ』の心理描写は、酸いも甘いも噛み分けた大人にも突き刺さる。アニメだから…とは言わず、この機会にぜひ胸を打つ物語を堪能してほしい!
文/トライワークス