これを知れば『空海―KU-KAI―美しき王妃の謎』がもっと楽しめる!人物事典・白楽天編
2月24日(土)に公開される日中合作の歴史ミステリー『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』。約1200年前を舞台に、唐の長安で若き修行僧・空海(染谷将太)が、楊貴妃の死をめぐる謎解きに挑む本作で、彼の相棒を務めるのが、後に唐を代表する詩人・文学者として名を残す白居易こと白楽天である。今回は劇中、宮廷の記録係を務める傍ら、空海と絆を深める白楽天について解説する。
役人として勤めながら、詩歌の才能を磨く
白楽天こと白居易は、李白、杜甫らと共に唐代の詩人として日本でも有名だ。772年に生まれた彼は物心がついた頃から読み書きに秀で詩歌の才能を発揮、周囲を驚かせていたという。
800年、白楽天は20代で官吏の採用試験“科挙”に合格、官職を授かっている。その後、白楽天は“翰林学士”と呼ばれる職を任じられる。この職は、詔書を起草する“翰林院”に務める者で、翰林院を設置したのは玄宗皇帝であった。こうした役職を務めながら白楽天は詩作に励んでいったと言われる。
映画でも重要な詩「長恨歌」を発表
そんな白楽天は、806年に発表した「長恨歌」をきっかけに詩人としての名声を得る。玄宗皇帝と楊貴妃の愛を題材にしたこの歌は、2人の出会いから別れを小説風につづった大作。史実に脚色を加えて波瀾万丈の物語として書き上げている。悲劇の愛の詩はやがて日本にも伝来、紫式部の「源氏物語」など多くの古典にも影響を与えている。
映画では「長恨歌」が重要な役割を果たし、彼が詩作していたころ空海と出会う。実際、空海は804~806年に遣唐使として唐に留学していたのだ。映画のように2人で語らい、絆を深めていたかも…?
白楽天はその後も「琵琶行」「新楽府」など多くの作品を発表。官吏としても71歳まで勤め、75歳で世を去るまで悠々自適の日々を送る。 亡くなる前年には詩文集「白氏文集」を完成させている。
映画では、陽気でナイーブな空海の相棒役
官吏でありながら、詩人として名を残した白楽天。映画では『ブラインド・マッサージ』(14)、『ミッション:アンダーカバー』(3月11日公開)など主演作が相次ぐ中国の若手演技派ホアン・シュアンが、世渡り上手な文人・白楽天を伸びやかに好演。話し好きで遊び上手な陽気さは、物静かな空海と対照的で、そのコントラストがホームズとワトソン、金田一耕助と磯川警部に代表される“相棒もの”としての魅力を引き立てる。また、シュアンの吹き替え声優を担当した高橋一生の軽快なテンポにも注目して、映画を味わいたい。
文/トライワークス