これを知れば『空海―KU-KAI―美しき王妃の謎』がもっと楽しめる!人物事典・阿倍仲麻呂編
2月24日(土)公開の日中合作の歴史ミステリー大作『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』。唐の都・長安で若き修行僧・空海と詩人・白楽天が、妖猫が引き起こす怪事件の真相を探る上で重要人物となるのが阿倍仲麻呂だ。…といっても仲麻呂が活躍したのはさらに50年昔の時代。空海が唐を訪れた時はすでに故人となっていたが、仲麻呂が残した日記をきっかけに、物語は核心へ迫る。
若くして、異国で大成した留学生
698年に生まれた仲麻呂は奈良時代の文人。19歳の時に遣唐留学生に選ばれ、717年に唐へ渡る。唐では高等教育機関で学び官吏の採用試験“科挙”に合格。晁衡(ちょうこう)という中国名を得て官職を歴任している。文才や豊富な知識から一目を置かれる存在となった仲麻呂は、時の皇帝・玄宗に気に入られ日本に帰る機会を逃してしまう。
その後も仲麻呂は長安で要職に就き、唐で暮らして35年目の752年に帰国を許される。ところが船が暴風雨に遭い、彼は現在のベトナムに位置する唐の領地へ漂着。苦労の末に長安まで帰着するが、その後も故郷の土を踏むことは叶わず73歳で没するまで唐で人生を送った。
『ちはやふる』ファンならご存知の歌人
李白、王維ら名立たる詩人とも交流を持った仲麻呂は、日本では「古今和歌集」「小倉百人一首」にも選出されている歌人として有名だ。小倉百人一首の「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも(天の月は故郷・三笠山の月と同じ)」は、先述の帰国を前に催された送別会で仲麻呂が詠んだものと伝えられている。
阿部寛が唐へ留学した新参者を好演
映画で仲麻呂を演じたのは『祈りの幕が下りる時』(公開中)に出演の阿部寛。劇中、玄宗が寵愛した楊貴妃に心惹かれ苦悩する姿を熱演。臣下の反乱をきっかけに、悲劇に見舞われる楊貴妃の身を案じた彼は、いったいどんな行動に出るのか?また空海に仲麻呂の日記を託す彼の側室・白玲を松坂慶子が演じ、ありし日の仲麻呂への想いを明かすシーンも、心に静かに刻まれるはずだ。
文/トライワークス