歴史ミステリー『空海-KU-KAIー』に隠されたキーワードを徹底解説![前編]
夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を、中国映画界の巨匠チェン・カイコーが映画化した絢爛豪華な歴史ミステリー『空海-KU-KAIー美しき王妃の謎』。一度観ただけでは読み解ききれないほど多くの謎が隠された本作を、より深く味わうために押さえておきたいキーワードを紹介したい。
【ストーリーの核心に触れる内容が含まれているため、まだ作品を鑑賞していない方はご注意ください】
■世界最大の都市
紀元前1000年よりも前から中国の都として君臨した長安は、美しい都市設計が特徴であり、日本の平城京や平安京にも影響をもたらしたとされる。中でも玄宗皇帝が即位した8世紀前半、“開元の治”と呼ばれた絶頂期には、すでに衰退していた東ローマ帝国の都・コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を上回り、100万人以上の人口を擁する世界最大の都市へと成長したといわれている。
劇中でも描かれている通り、玄宗皇帝が楊貴妃を溺愛するあまり政治的な混乱を招き、それをよしとしなかった将官・安禄山が謀反を企ててはじまった「安史の乱」が勃発。それを契機に長安は衰退の一途を辿ることとなった。
■詩仙と呼ばれた男
中国史上最も偉大な詩人といわれながら、生い立ちから死に至るまで多くの謎を残す李白。その天才的な詩のセンスと、奔放で変わり者だったことから「謫仙人」(天上界から地上へと追放された仙人)と呼ばれた彼は、のちに「詩仙」と呼ばれるようになり、劇中でも偏屈な人物として描かれている。
極楽の宴に招かれた彼は、酒に酔いながら楊貴妃の美しさを称える「清平調詞」を詠むのだ。「雲には衣装を想い、花には容を想う」という言葉で始まる七言絶句の中で語られる“花”とは、当時長安で大流行していた牡丹の花のことであり、その美しさと楊貴妃の美しさを掛けたものだといわれている。
■道教の秘法
儒教や仏教と並び唐代の中国を代表する宗教として知られる道教は「神仙思想」を基本とし、さまざまな術を利用する。劇中で玄宗は、安史の乱により窮地に追い込まれる中、幻術師の黄鶴から楊貴妃を処刑したと見せかける手段として仮死状態にさせる「尸解の法」という術を提案される。しかしそれは玄宗と黄鶴が仕組んだ嘘であり、彼女は命を落としてしまう。
実際の「尸解の法」といわれるものには様々な形態があり、主に死者が自らの肉体を残したまま魂だけを抜け出させること。彼女を愛し仕え続けた黄鶴の弟子・白龍は、楊貴妃の体内に残っていた毒を自ら摂り、その死の際に尸解。共に楊貴妃を見守っていた黒猫に魂を乗り移らせ、復讐を遂げていく。
文/久保田和馬
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