染谷将太「ホアン・シュアンと深い友情が生まれた」“空海&白楽天”バディの魅力とは?
『さらば、わが愛 覇王別姫』(93)や『始皇帝暗殺』(98)などで知られるチェン・カイコー監督が、夢枕獏による原作を日中合作で映画化した『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』(2月24日公開)。主人公の空海役には、若手実力派の筆頭である俳優・染谷将太が抜てきされた。世界的巨匠とのタッグで挑んだビッグプロジェクトはどんな経験になったのか。
本作は、若き僧侶・空海(染谷)と中国が生んだ稀代の詩人・白楽天(ホアン・シュアン)が、王朝を震撼させる怪事件の謎を追う姿を描くエンタテインメント大作。物語の舞台となる長安の都を再現するために、約6年もの歳月を費やして東京ドーム8個分にも及ぶセットが作られるなどカイコー監督がこだわり抜き、圧倒的なスケールとともに描く歴史絵巻だ。
染谷も「360度、どこを見渡しても長安の街が広がっていました」とその壮大さに感嘆。超ビッグプロジェクトの主演に抜てきとなり「このプロジェクトをまっとうしなければという、強い責任を感じました」と覚悟して挑んだという。
「中国の俳優さんたちも『カイコー監督の現場は特別だ』と話されていました。カイコー監督だからこそ、この規模の映画を作ることができたんだと思います」としみじみ。「監督は最初にお会いした時に『この映画で“真の美”を追求したいんだ』とおっしゃっていました。演出の際は、中国の昔の詩を用いたりしながら、僕らに説明してくれるんです。それがまた美しい言葉ばかりで…。『この言葉から想像してごらん』と言われて、様々な想像力をかきたてられました。これはほかでは味わえない、カイコー監督ならではのマジックだったと思います」と刺激的な撮影となった様子だ。
相棒となる白楽天を演じたホアン・シュアンとも、しっかりと絆を育んだ。「ホアン・シュアンさんとは、たくさんの話をしました。撮影以外の時間もご飯に誘っていただいたりもして。言葉や文化が違うからこそお互いをもっとよく知りたいと思い、より深い友情が生まれたと思います。彼はものすごく志が高くて、優しくて誠実な方。絶対にモテますね(笑)。彼が白楽天でなければ、僕も撮影を乗り越えられなかったと思います」。
染谷は「空海と白楽天のバディムービーとも言えます」と本作をアピールする。「空海と白楽天が時にはケンカをしながらも、楊貴妃の死の謎に迫っていく。頭脳プレイヤーの空海と、行動を起こす白楽天という、静と動の2人がそろったからこそ、壁を乗り越えていくことができるんです。彼らがぶつかり合う場面がありますが、それもまた2人の関係性を近づけるもので。男同士の葛藤がよく映しだされたシーンになったと思います。そこには時代や国も違えど、誰しもが共感できる感情がきっとあるはずです。2人の若者の成長物語を楽しんでほしいです」。
「またこの2人で謎を解いてみたい?」と聞いてみると、「いいですね。ぜひ『パート2』をやってみたいです。ひとつ謎を解いたら、また新しい謎が出てくるようなミステリーです」とニッコリ。「僕は『相棒』や『シャーロック・ホームズ』など、バディもののミステリーが大好きで。ジャッキー・チェンの『ラッシュアワー』もおもしろかったですね。小さなころからジャッキーと共演してみたいという夢があるので、いつか彼とバディものをできたら最高に幸せです」と楽しそうに夢を語る。
若き日の空海を演じ「空海は何事にもとらわれない人。自分自身にすらとらわれません。『なんでも来い!』という姿勢なんです。空海を通して、“可能性は無限大”だと感じることができました。自分はまだ始まってもいないし、終わってもいない。僕も、そう考えられる自分でありたいと思いました」と視野も広げたようだ。約5か月にわたる中国ロケを経て豪華絢爛なエンタテインメント大作が完成したいま、本作で得た経験をこう語る。
「中国語の文法もわからないところからのスタートで、撮影のスタイルも独特。もちろんハードルは高かったですが、とてもいい経験になって。僕にとって、生涯忘れられない作品になりました。実はいまでも、ちょっと空海に浸っているところがあるんです。俳優というのは、いつもすべてが未知で、チャレンジと発見のある仕事。中国に行って培った経験を『これからどう活かせるのか?』とまた新たな気持ちも膨らんできています」と、充実の表情を見せた。
取材・文/成田 おり枝