『犬ヶ島』が銀熊賞を受賞!女性監督の活躍が目立った第68回ベルリン映画祭受賞結果まとめ
現地時間24日、第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門の受賞結果が発表された。監督賞に輝いたのはウェス・アンダーソンの『犬ヶ島』(日本5月公開)。日本を舞台にしたストップモーション・アニメーションで、ボイスキャストとして参加したRADWIMPS・野田洋次郎や夏木マリがレッドカーペットを歩いたことも話題に。この日は監督の代理としてビル・マーレイがトロフィーを受け取り、「この映画はウェスの日本映画に対する敬意を表した映画であるという点が重要なんだ」とスピーチ。「まさか俳優としてイヌを演じ、クマ(のトロフィー)を連れて帰ることになるとは思わなかったよ」と笑いを誘った。
ウェス・アンダーソンにとっては、本作と同様にFOXサーチライト・ピクチャーズが手掛けた前作『グランド・ブダペスト・ホテル』でも銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞。2作連続の快挙となった。
女性監督たちの挑戦作が金熊賞&銀熊賞に!
『ミー・トゥー』ムーブメントの嵐と共に幕開けした2018年の映画界。常に女性の存在を重視してきたベルリン国際映画祭は、語ることよりも実践することの大切さを無言で証明する年となった。毎年、様々な国の女性監督が話題となり、多くの賞を受賞する映画祭だが、今年は一段と女性の活躍に注目が集まった。受賞作はどれも大胆かつ画期的な視点に立った挑戦作ばかりだ。
最高賞である金熊賞に輝いたのはルーマニア出身のアディナ・ピンティリエ監督による『Touch Me Not』だ。肉体的な親密さとはなんなのか?を観る者に問いかける実験的な作品で、英国女優演じる50代の女性を中心に、身体障がい者やトランスジェンダーなど、様々な人間の体が様々な状況や形で接触しあう。主人公は触れあいたいと思いながらも触れることへの不安にかられる。フィクションとノンフィクションの境界線に大胆に挑戦する映画でもある。ルーマニア、フランス、ドイツ、チェコ、ブルガリアの出資によって制作が実現した。
次点の銀熊賞はこれまた女性監督、ポーランド出身マルゴザーダ・スモウスカ監督(44歳)による『Twarz』。ヘビーメタルを愛する主人公が交通事故で重傷を負い、ポーランドで初の顔面移植手術を受けることになる。それによって彼の人生は想像もしなかった展開を遂げていくという物語。ドイツ国境の小さな町を背景に、ベルリンの壁の崩壊以後に変貌とげたポーランドの抱える矛盾に矛先を向ける。
また銀熊賞で映画の新開地を開く映画に送られる特別賞アルフレッド・バウアー賞にはマルチェロ・マルティネッシ監督のパラグアイ映画『The Heiresses』が選ばれた。監督は「パラグアイという国は、映画の世界でほとんど存在を認識されていない国です。だからこそ、ベルリンでこうやって映画を上映してもらうのはうれしいこと。パラグアイは女性が無視される社会、女性平等権という討論さえも起こらない保守的な社会だからこそ女性を主役にしたかったのです」と熱く語った。
そのほか、パノラマ部門のオープニング作品ともなった行定勲監督の『リバーズ・エッジ』が、独立系審査員賞の選択による評論家連盟賞を受賞した。『犬ヶ島』『リバーズ・エッジ』と、日本人キャストが参加の作品が賞をさらう結果に。7年前も行定監督は『パレード』で同賞を獲得している。
取材・文/高野裕子