クリント・イーストウッドと3人の英雄たちが語る、“普通の人間”が成し遂げた偉業
現在87歳のクリント・イーストウッドが『ハドソン川の奇跡』以来2年ぶりにメガホンをとった最新作『15時17分、パリ行き』がいよいよ3月1日(木)から公開される。
2015年にパリ行きの特急列車内で実際に起きた無差別テロ襲撃事件を描いた本作は、武装した犯人に立ち向かった勇敢な3人の若者たちを、俳優ではない当事者本人が演じ、さらに事件が起きた場所で撮影するという大胆なスタイルで話題を集めている。今回そんな本作から、イーストウッド監督とキャスト3人が事件を語る特別映像が解禁された。
事件が発生したのは2015年8月21日、15時17分にオランダのアムステルダムを出発した特急列車タリスは、554人の乗客を乗せてパリに向かって走っていた。フランス国境に入った直後、車内にいたイスラム過激派の男が突然自動小銃を発砲。乗客たちは緊張と恐怖に包まれるなか、乗り合わせていた3人の幼なじみは真正面から立ち向かっていく。
イーストウッドは、3人の幼なじみが運命に導かれるかのように遭遇したテロについて「主人公の3人はごく普通の男たちだが、危険を顧みず行動した。列車の乗客は500人以上、大惨事になっていたかもしれない」と解説。
『アメリカン・スナイパー』ではイラク戦争で多くの米兵を救った狙撃手クリス・カイルを、そして『ハドソン川の奇跡』では咄嗟の判断で航空機事故を防いだ機長チェスリー・サレンバーガーを描きだしたイーストウッドは、本作でも実在の英雄を主人公に彼らの功績を讃える。「この映画はごく普通の人々に捧げた物語。ごく普通の人間が偉業を成し遂げたんだ」。
そしていくつもの偶然が重なり、テロに遭遇した3人は当時のことを振り返る。「あの状況から生還できたことは奇跡」と語る元オレゴン州州兵のアレク・スカラトスと、誰よりも先に犯人に突進していった元米空軍下士官のスペンサー・ストーン。そして当時学生だったアンソニー・サドラーは「神が導いたような気がする」とコメント。
幼い時から苦難を共にしながら友情を育み、それぞれの道を歩んでいた3人が、なぜ命をかけてまでテロに立ち向かうことができたのか。これまで数多く作られてきた“実話映画”とは一線を画したリアリティで描かれる本作。テロの時代を生きる世界中の人々へ向けたメッセージを、しっかりと受け止めていただきたい。
文/久保田和馬