染谷将太&阿部寛が伝授!『空海』の謎を解き明かすヒント
チェン・カイコー監督が夢枕獏の原作を映画化した話題作『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』がついに公開され、ダイナミックな映像、ドラマチックなストーリーで観客を魅了している。謎が謎を呼び、随所に張り巡らされた伏線が回収されていく展開はミステリーとしても見応えたっぷり。染谷将太と阿部寛を直撃し、公開後だからこそ語れる本作の“謎”を解き明かすヒントを教えてもらった。
本作は、若き天才僧侶・空海と、中国の詩人・白楽天(ホアン・シュアン)がバディを組んで怪事件に挑む姿を描く歴史エンタテインメント。空海と白楽天が長安で起きる怪事件を調査するなか、絶世の美女・楊貴妃の死に隠された真実にたどり着く…。主人公の空海を染谷、物語の鍵を握る人物・阿倍仲麻呂を阿部が演じた。
空海と阿倍仲麻呂が生きている時代が異なるため、直接の共演シーンはなかったという彼ら。阿部が秋山好古役を演じたドラマ「坂の上の雲」では、阿部の少年期を染谷が演じるなど不思議な縁のある2人だ。阿部が「そうなの?(ドラマを)観直そう」と声を弾ませると、染谷も「実はそうなんですよね」とうれしそうな笑顔を見せる。
染谷は「阿部さんは回想シーンに出演されていますが、このミステリーの謎は阿倍仲麻呂の目を通して解き明かされていくんです。絢爛豪華な宴のシーンで阿部さんは、とても異質な存在としてそこに立たれていた。宴のなかに溶け込まず、“一人の日本人”として立っている姿がとても素敵だったんです」と阿部の存在感に惚れ惚れ。
阿部は「染谷くんは主役としてこの作品の真ん中に立ってくれた。それはすごく大変だったと思うんですが、チェン・カイコー監督の作り上げる世界の中心で芝居ができたと思うと、うらやましくもありますね」とニッコリ。「空海という人物のおもしろさやチャーミングさもしっかりと表現されていて、存在感でストーリーを引っ張っていく姿はすばらしいなと思いました。以前、共演した安田顕が『染谷くんは化け物だ』と言っていたんだけれど、本当にその通りだなと思いました」と賛辞を送る。
本作では、空海の旅路を通じて楊貴妃の死の真相に迫っていく。染谷は「実在した人々が繰り広げるミステリーには説得力があり、起きるドラマもより壮大に感じられる。セットや映像もすばらしいので、どんどん物語に引きずり込まれる」、阿部も「阿倍仲麻呂についても、『もしかしたらこういうことがあったかもしれない』と想像もできる」と歴史の裏側を描く物語に興奮しきり。
またクライマックスで明らかとなる真実について、染谷は「とても美しい悲劇」と感想を述べ、「後半は息をつく暇もなく、どんどん謎が暴かれていくんです。扉が次々に開いていく感じがして、すごく気持ちがいい」と見事な伏線回収に驚いたそう。そこでネタバレありきで、謎を解き明かすための注目ポイント&特に感心した伏線について聞いてみた。
染谷は「台本を読んで『すごいな』と思ったのは、瓜翁と空海の会話です。空海が『スイカがスイカでなければ猫は…』というと、瓜翁は『猫も猫ではないのだろう』と笑う。そこですでに、空海はある謎の真相に気づいていますし、瓜翁の正体も察しているんです。この細かい伏線はとてもおもしろいので、ぜひ注目してほしいですね」といい、「あとは空海の表情。彼がニヤニヤしているときは、たいてい真相がわかっている時です。逆に言えば、真剣な顔をしている時は空海もまだ謎が解けていない(笑)。空海の表情を見たら『この時は空海もまだわかっていないんだな』と気づくことができたりするので、それもおもしろいと思います」とポイントを伝授。
阿部は「楊貴妃の美しさ」が鍵を握っていると話す。「今回の楊貴妃は、とても繊細な表現が必要になるキャラクターです。白龍も丹龍も楊貴妃のことが大好きで、その愛があるからこそ物語が動いていく。つまり、楊貴妃の美しさに説得力がないといけないんです。監督もその表現にはとてもこだわられていて、楊貴妃役のチャン・ロンロンさんに細かく、厳しく演出されていました。ロンロンさんは、OKをもらえた時には感動で泣いている時もありましたね。監督の演出によって、ロンロンさんが肌の質感から変わっていくのを目の当たりにしました。空気まで巻き込んで、お芝居をされていたんです」。
染谷も阿部も「こんな経験はなかなかできない。一生、忘れられない作品になった」と声を揃える。染谷は「“空海が一瞬だけなにかを見る”という、些細な芝居にまですべてに意味があって。監督は“君がいま見た行動は、ここにつながるんだよ”と演出されていたんです。そこかしこに散りばめられている伏線も楽しんでほしいです」というから、一度観ただけでは堪能しきれない!極上のミステリーをスクリーンで味わってみてほしい。
取材・文/成田 おり枝