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仲代達矢、勝新太郎との『影武者』の代役騒動を語る「葬式で抱き合った」

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仲代達矢、勝新太郎との『影武者』の代役騒動を語る「葬式で抱き合った」

長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎など伝説の名優を輩出してきた映画会社・大映の男優たちをフィーチャーした「大映男優祭」が、4月14日(土)から5月11日(金)まで角川シネマ新宿で開催。市川雷蔵主演の『炎上』(58)が4月21日に上映され、本作に出演した仲代達矢登壇のトークイベントが行われた。

『炎上』は、三島由紀夫の「金閣寺」を原作に、巨匠・市川崑が綴った魂救済のドラマ。吃音の主人公・溝口吾市を市川雷蔵が、足の悪い溝口の友人・戸苅を仲代が演じた。仲代は「僕が26歳で出演した。60年前の映画ですが、それにしてはすごい新しい映画に出ていたなと」と、感慨深い表情で感想を述べた。

仲代は「なによりすばらしいのは市川雷蔵さん。いつも見ている美剣士の雷蔵さんではなく、吃音のコンプレックスをもっていて、内面的にそれをひきずりこんでいて、私の方は自分のコンプレックスをあからさまに出していく。その対照がおもしろかったです」と語った。

撮影当時を振り返った仲代は「雷蔵さん、すごい人気がありまして。ロケーションに行くと、女学生がいっぱい集まってきて『雷さまはどこ?』と探すんだけど、すっぴんなので素通りするんです。私が『雷さま、ここにいるよ』と紹介係をやらせてもらいました」と笑いを取った。

仲代は市川雷蔵とプライベートの交流もあったそうで「雷蔵さんは歌舞伎からみえた方ですが、すごく哲学的で、私は気が合いました。祇園へ連れていってくれたのも雷蔵さん。素晴らしい俳優さんでした」と語った。

また、勝新太郎については「非常に気が合って、よく遊びました」と穏やかな表情を見せたあと、黒澤明監督作『影武者』(80)での代役騒動についても述懐。

「『影武者』で勝さんと黒澤さんがうまくいかないってことで、黒澤さんから連絡があって『代役で悪いんだけど、やってくれないか』と。勝さんは親友ですから『勝さんの了承を得てお返事します』と言って、さんざん追いかけたんですが、つかまらなくて。結局代役としてやることになりました。

その後、僕の女房が亡くなりまして。その時に勝さんが葬式に来られて。それまでお会いしてなかったんですが、抱き合って。向こうも女房が死んだことを悲しんでくれました」。

また、田宮二郎の印象については「モダンです」と印象を述べたあと、「実は『不毛地帯』(76)をやって『白い巨塔』(66)でも、山崎豊子さんからお話があって。主役が田宮さんでした。ちょうどそのとき、演劇をやっていたのでお断りを申し上げ、非常に残念だったと思いました」というエピソードも明かし、会場をどよめかせた。

今回の「大映男優祭」は、大映の創立75周年にあたる2017年夏に「おとなの大映祭」、冬に開催された「大映女優祭」に続き、最後を締めくくる第3弾となり、厳選した45作品が一挙上映される。

最後に仲代は「いい作品は時空を超えますよ。これ、60年前に作ったの?と。『炎上』もある意味、実験的なこと、象徴的なことを市川崑先生はやってます。ただ燃やすだけの話じゃないです。久しぶりに大きな画面で観ましたが、映画はぜひ大きな画面で観てください」と力強締めくくった。

取材・文/山崎 伸子

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