297個のそばかすも手作業!?ウェス・アンダーソンがこだわり抜いた『犬ヶ島』驚異のパペット制作工程
『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)などで世界中の映画ファンを魅了してきたウェス・アンダーソン監督が、アカデミー賞にノミネートされた『ファンタスティック・Mr.FOX』(09)以来9年ぶりに手がけたストップモーション・アニメ『犬ヶ島』(5月25日公開)。このたび本作から、劇中に登場するパペットたちの制作過程に迫った驚きの特別映像が到着した。
全編日本を舞台に、“ドッグ病”の蔓延によって追放された犬たちの暮らす“犬ヶ島”に愛犬を探しにやってきた少年アタリと、彼を助ける5匹のヒーロー犬の大冒険を描き出した本作。ウェス・アンダーソン作品ならではの超豪華ボイスキャストが集結したことでも大きな注目を集めている。
到着した映像の中ではパペットの責任者アンディ・ジェントが、ひとつのパペットが完成へと向かう様子を丁寧に解説。パペット制作の土台となる塑像や型作りの成型、パペットを動かすアーマチュアと呼ばれる装置、そしてシリコンや美術、毛髪作業にコスチューム作業などの工程が映し出されていく。
本作の劇中に登場するパペットの数は何と1097体。1メートルに及ぶ大きなものから、15ミリのサイズしかない小さなものまで幅広く作られたとのこと。しかもそれぞれのキャラクターの表情によって細かいパーツを変えていくため、顔や口のパーツだけでも数千個にものぼるのだ。
また、パペット制作を担当したスタッフの数は70名。全員が手作業で作りだしたパペットの精巧さと、そのアイデアの数々にはただただ驚かされることだろう。そして映像の中ではグレタ・ガーウィグが声を吹き込むトレイシーの顔にある297個(!)のそばかすを、手作業と目視で他のパーツへと描き移したという衝撃のエピソードも明らかに。
ウェス監督は「パペットの仕様にはたくさんの選択肢がある。決める基準は作品の世界観に合うか。物語や声優の演技にあっているかどうか」と、本作でも独特な世界観が炸裂し、俳優たちの魅力が存分に引き出されていることをうかがわせるコメント。
さらに「そして、遊び心があるかどうかだ」と、黒澤明や宮崎駿といった日本の巨匠たちから受けた多大な影響と、日本への愛情を独自の方法でさらけ出したことを語った。徹底的にこだわり抜かれた“日本”の光景と活き活きとしたキャラクターたちの姿を、是非とも劇場で確認していただきたい。
文/久保田 和馬