「バットマンは侍に通じる部分がある」日本アニメ界の“ジャスティス・リーグ”が生んだDC映画は自由度満載!
バットマンとジョーカーが、日本の戦国時代で過激なバトルを展開する!スタイリッシュな映像と奇想天外なストーリーで、海外でも絶賛を浴びている映画『ニンジャバットマン』(公開中)。
本作を生み出したのは、劇団☆新感線の作家として活躍する脚本家・中島かずきと、ちまたで話題のTVアニメ「ポプテピピック」を製作した神風動画の代表であり本作の監督・水﨑淳平。今回はその「ポプテピ」とコラボしてしまった“ポプ子バットマン”と“ピピ美ジョーカー”と共に、映画の制作秘話を直撃インタビュー!
プロット&キャラデザ段階で本国のDCコミックスも「すばらしい!」と絶賛
――ヒーローやヴィランが戦国時代にタイムスリップする発想は、どこから生まれたのでしょうか?
中島「お話をいただいた時は、『ニンジャバットマン』というタイトルのみ決まっている状態でした。だったら、戦国時代に行ったジョーカーたちをバットマンが止める話がいいんじゃないかと言ったんです。水﨑さん、キャラクターデザインの岡崎能士さんとの最初の打ち合わせの時ですね。はじめましての顔合わせで、ほぼほぼプロットができた感じ(笑)。岡崎さんの描かれた“第六天魔王”ジョーカーとか、戦国風のイラストもかっこよくて『これはいける!』と思いました。僕ら3人とも面白がる方向が一緒だったので、打合せはテンションが上がる一方で(笑)」
水﨑「ストーリーや構成で、作って消してもう一度作り直して…ということはなかったですね。ファーストインプレッションで上がったものをDCコミックスさんに送ったら、あっさり『すばらしい!』と戻ってきた。ハリウッドはマーケティング重視で、キャラクターも時間をかけて何度も直すと聞いたことがあったので、『あれ?通ったぞ』と(笑)」
中島「割と自由に作らせるチャレンジ枠だったのかもしれないですね。お城が変形しちゃうような作品ですから、こちらもやれることは全部やるということです」
――バットマンというキャラクターの魅力は何だと思いますか?
中島「ガジェットの魅力もありますが、やっぱり生身の人間という点。強い意志と財力で戦うところがバットマンの面白さだと思います。それとブルース・ウェインは、努力して技を会得したり徹底して身体を鍛えるなど、自分を突き詰めるタイプじゃないですか。侍に通じる部分があるし、そんなバットマンだから忍術を覚える姿に納得できるんだと思います」
水﨑「それにスーパーパワーを持った超人の心理は、僕ら理解しきれませんから。もし特別な力を持っていたらどう感じるか、わからない部分がある。でもバットマンの場合、『めっちゃ金持ってたら俺こうするな…』ってある程度は想像できます(笑)」
アニメーションスタッフたちの“暴走”が化学反応を起こす!
――今回、神風動画としては初の長編映画ですが、水﨑監督はどんな心境で臨んだのでしょう。
水﨑「神風動画は“90秒で猛威をふるう”ショート作品の印象を皆さんは持たれていると思います。自分も最初は『90分もできるのか?』と疑いました。まず考えたのがバラエティ感というか、流れに沿ってストーリーを大きくブロック分けし、それぞれにディレクターを立てて彼らに猛威をふるってもらうこと。それらのバランスを、全体を見ながら整えるのが僕の仕事、という感覚です。業界でも名の通った人が揃ってくれたので、いわばアニメ業界の“ジャスティス・リーグ”状態でした(笑)」
――実際、どんなヒーロー…もといスタッフが揃ったのでしょう?
水﨑「3人のパート監督には、彼らが出してきたものは否定しないという前提で、“暴走”してもらいました。前半のAパートを担当していただいた高木真司さんは、映画『スチームボーイ』(04)の演出もされていたベテランです。十数年前、まだCGをセルアニメの代用にする僕らの取り組みに、業界が否定的だった頃から神風動画を評価してくださっていたんです。独特の視点をお持ちで、いつか一緒に仕事をしたいと思っていました。
BパートはOVAやCMなど様々なジャンルで活躍されている山元隼一さんに担当していただき、それ以降の部分を、アカデミー賞にもノミネートされた「九十九」(映画『SHORT PEACE』(13)の一篇)をはじめ劇場作品やTVシリーズなど尺の長い作品の経験が豊富な、YAMATOWORKSの森田修平さんが担当するという布陣でした。その他にも、“百姓パート”は『かぐや姫の物語』(13)で活躍した作画スタッフをメインに制作を進め、モーション・グラフィックが得意なNISHIKAIGANさんには“ねぶた”のシーンをお願いしたりもしています。
CGI監督の水野貴信も神風動画の創立メンバーに近いので付き合いが長いんです。技術的な研究開発に力を入れる一方で、表現力や演出センスもすごいものを持っている。うちではどの仕事をやるかは各自に選んでもらっていますが、今回は『終わったら好きなことしていいから、この作品を助けてくれ!』と頭を下げて参加してもらいました」