ホクロ1つにもこだわリ!リュック・ベッソンの職人魂にルイーズもびっくり
ヒロイン・アドベンチャー『アデル ファラオと復活の秘薬』(7月3日公開)でリュック・ベッソン監督と、主演女優ルイーズ・ブルゴワンがそろって来日。ファンをハラハラさせた引退宣言も本作で見事に払拭したベッソン監督が、女性版インディ・ジョーンズのように勇敢なヒロインを好演した新ミューズと共にインタビューに答えてくれた。
本作は、ルイーズ・ブルゴワン扮するジャーナリストのアデル・ブラン=セックが、事故で瀕死状態の妹アガットを救うため、エジプト王家に伝わる復活の秘薬を手に入れようと大奮闘する冒険物語だ。原作はジャック・タルディの人気コミックで、一時期、他の監督による映画化が決定していたが頓挫。そこで以前から興味を持っていたベッソン監督が6年間粘り強く交渉したのだという。「毎年、タルディに電話をして『お元気ですか? 考えは変わりませんか?』って言い続けた。たぶん根負けしてOKしてくれたんじゃないかな(笑)。それで脚本を書き始め、これは自分で監督がしたい!と思うようになったんだ」。
主演女優に抜擢されたルイーズは、本国フランスの有料チャンネルでお天気お姉さんとして注目され、2008年に映画デビューしたばかりの新進女優だ。そんな彼女が撮影で大変だったのは、復活した翼竜に乗るシーンだったとか。「3m50cmくらいの高さの場所で、ガタガタするロデオマシンみたいなものに乗ったの。いろんな方向に動くから、洗濯機の乾燥機に入れられた気分だったわ」と笑いながら語るルイーズ。ベッソン監督は、彼女の頑張りをこうねぎらった。「ルイーズはなんでも全力投球してくれる。でも、テニスのシーンでは肉離れを起こしてしまったんだ。だから、翼竜のシーンも、実はちょっと心配したよ」。
ふたりの信頼関係は絶大だ。ベッソン監督が「アデルのホクロの位置ひとつにしても、ルイーズと一緒に何時間も迷ったよ。つける場所や、ペンシルの色の濃淡まで吟味したんだ」と言うと、ルイーズは監督をこう絶賛する。「ベッソン監督は、ひとつの“映画の帝国”を作り上げた方。成功を収めるにはここまでやらないといけないのかと感心したわ」。
また、ベッソン監督は、自身の映画作りを、日本の“漆器”にたとえて話をしてくれた。「漆器って何回も何回も丹念に上塗りしていくだろう。映画もそのイメージさ。数回しか塗ってない物と、10回以上塗った物とでは、ぱっと見が同じでも、近くに行って触ってみると明らかに違う。手をかけた証拠だね。映画も何年か経って観た時、別の感動が生まれたとしたらそれは本物で、僕はそういうものを目指している」。
漆器のような映画作りによって、これまでに『ニキータ』(90) のアンヌ・パリローや、『レオン』(94)のナタリー・ポートマン、『フィフス・エレメント』(97) のミラ・ジョヴォヴィッチなどをスターダムに押し上げてきたベッソン監督。まさに女優の原石を発掘する名手だが、彼のお眼鏡にかなったルイーズの才能を開花させた『アデル ファラオと復活の秘薬』も、ベッソンの女優開拓史に刻まれる1本となりそうだ。【Movie Walker/山崎伸子】