ブラッド・バード監督が明かす、“インクレディブル”なヒーローたちの役割とは?

インタビュー

ブラッド・バード監督が明かす、“インクレディブル”なヒーローたちの役割とは?

全米でアニメーション映画歴代No. 1の興行収入を叩きだし、現在もその記録を更新し続けているディズニー/ピクサーの最新作『インクレディブル・ファミリー』が8月1日(水)に日本上陸。アカデミー賞で2部門に輝いた前作『Mr.インクレディブル』(04)に続き本作のメガホンをとったブラッド・バード監督が来日し、本作への強いこだわりを語ってくれた。

アニメ界の巨匠ブラッド・バード監督に直撃インタビュー!
アニメ界の巨匠ブラッド・バード監督に直撃インタビュー!

スーパーヒーロー活動が禁止された世界を舞台に、かつてスーパーヒーローとして活躍していたMr.インクレディブルことボブとその家族の活躍を描きだした本作は、前作のラストシーンから幕を開ける。宿敵との対決で街を破壊し、警察から事情聴取を受けたボブは厳しい現実を目の当たりにする。そんななか、イラスティガールことボブの妻・ヘレンに新たなミッションが舞い込み、ボブは家の留守を任され子育てや家事に奮闘。やがて彼らに、ある陰謀が迫り来ることに…。

劇中では前作直後の世界が描かれるが、実際には14年もの月日が経過している。それでも本作の中で、主人公たち家族が置かれている状況や、彼らの持つ能力についての説明はあえてされない。その理由についてバード監督は「観客のほとんどが前作を観ていると思ったからというのが理由のひとつだが、もうひとつ言うならば、最近の映画は少し説明過多になっていると感じるからなんだ」と明かし「観客を突然映画の世界の中に連れていくほうが絶対におもしろいだろ?」とニヤリと微笑んだ。

他のスーパーヒーロー映画とは違う、家族の絆の物語は必見!
他のスーパーヒーロー映画とは違う、家族の絆の物語は必見![c]2018 Disney/Pixer. All Rights Reserved.

そんな14年の間に、ハリウッドの映画界はマーベルヒーローをはじめとした“ヒーロー映画”が群雄割拠の状態に。「もしかしたら観客はスーパーヒーローに飽きはじめているんじゃないかと心配もしていたんだ」と本音を吐露したバード監督は「でもこの映画はほかのスーパーヒーロー映画とは違う。家族の映画なんだと思い出したら、その心配は吹っ飛んだよ」と同ジャンルの映画との違いに自信をのぞかせる。

その言葉通り、“家族”という普遍的な題材が多くの観客の心を掴み、世界中で大ヒットを記録しているが、もうひとつヒットの要因としてあげられるのは、アニメーション映画の限界を突破したアクションシーンの数々ではないだろうか。

14年ぶりの続編ではイラスティガールが大活躍!
14年ぶりの続編ではイラスティガールが大活躍![c]2018 Disney/Pixer. All Rights Reserved.

バード監督と言えば近2作では実写映画に挑戦し、トム・クルーズ主演の人気スパイアクションシリーズの4作目『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(11)と、ジョージ・クルーニー主演のSFアドベンチャー『トゥモローランド』(15)を監督。本作は『レミーのおいしいレストラン』(07)以来11年ぶり、久々のアニメーション作品となった。

「アニメの場合は“最高のシーン”に向かってなにが足りないのか、どうやったら得られるのか、と小さな作業をたくさん積み重ねていく。でも実写の場合はどんなに準備をしても思っていた通りに撮れないことが多く、その場で頭の中に物語を描き、自然発生する瞬間を捕まえなければいけないんだ」と、アニメと実写の両方で成功を遂げた“二刀流”のバード監督だからこそわかる、それぞれの難しさを明かした。

【写真を見る】世界的巨匠のお茶目な一面も!ジャック・ジャックと記念撮影
【写真を見る】世界的巨匠のお茶目な一面も!ジャック・ジャックと記念撮影

近年『ファインディング・ドリー』(16)や『カーズ/クロスロード』(17)など、続編が目立つピクサー作品。本作も「トイ・ストーリー」や「カーズ」のように3作目が作られる可能性があるのだろうか?バード監督は「まだ2作目を作ったばかりだからね」と含みを持たせつつ「仮に3作目を作るとしても、ジャック・ジャックが成長することはありえない」と断言する。

「本作のコンセプトの強さというのは、それぞれの持つ能力が、家族の立ち位置や人生における段階、年齢に即した力だということにあるんだ。強い男であってほしいと期待される父親と、フレキシブルさが求められる母親。ヴァイオレットはティーンエイジャーだから不安を抱えて自分を守ろうとするために透明人間になったりフォースフィールドを張るし、ダッシュは元気いっぱいな10歳の男の子だから高速ボーイになる。そして赤ちゃんは未知の存在だから、どんな力を発揮するかわらからない」。

インクレディブル一家それぞれが持つ役割について説明したバード監督は「彼らの設定を変えてしまうと、ただのスーパーヒーロー映画と変わらなくなってしまう。そうなったら、もう“インクレディブル”じゃなくなってしまうからね」と、本作が特別な作品であり続けるためのこだわりを熱弁した。

取材・文/久保田 和馬

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