吉田大八監督が衝撃を受けた幻の映画に、あの巨匠の特集も!「PFF」ラインナップが発表
9月8日(土)から9月22日(土)まで東京・京橋にある国立映画アーカイブで開催される「第40回ぴあフィルムフェスティバル」のラインナップ発表会が8日に行われ、『BLEACH』(公開中)の佐藤信介監督、『桐島、部活やめるってよ』(12)の吉田大八監督、そして『EUREKA』(00)や『共喰い』(13)の青山真治監督がゲストとして登場した。
これまで塚本晋也監督や矢口史靖監督など、多彩な才能を世に送り出してきた「ぴあフィルムフェスティバル(以下PFF)」は今年で40回目という節目の年を迎える。これまで守り続けてきた「継続していくということ」をモットーに、今年も日本映画界の未来を担っていく新しい才能を見出していく。
映画祭のメインでもある「PFFアワード」には、529本の応募作品の中から18作品が選出。20代の監督が8ミリフィルムの質感にこだわって作り出した作品をはじめ、アニメーションやドキュメンタリー、カナザワ映画祭でグランプリを受賞したカンフー映画に、大学の卒業制作。さらに女優として活躍する小川紗良の監督作品まで個性豊かな作品が上映される。
その中から受賞作品を決める5名の最終審査員の1人に選ばれた佐藤監督は、1994年に『寮内厳粛』でPFFアワード1994グランプリを受賞。「今撮っている映画とは全然違うけれど、当時の全財産を投じて必死で作っていた作品。これしかないと思っていた、当時の自分が可愛い」と振り返りながら、自主映画の魅力、また当時からずっとコンビを組んできた撮影監督の河津太郎との思い出を明かした。他の最終審査員は後日発表されるとのこと。
また、PFFアワードとは別に<招待作品部門>「スペシャル講座『映画のコツ』」と題して、映画を志す人の役に立つ参考上映と対談スタイルの3つの講座も開催。そのひとつで登壇する吉田監督は、自身が学生時代に衝撃を受けた香川まさひとの作品の魅力を熱弁。「天才ってこういう人のことだと思った。その時からの思いが重なった果てに、今回の上映があります。これで心置きなく香川さんの話ができると思うと、夢のような企画です」と、数々の映画賞に輝く吉田監督が脱帽する才能が、スクリーンに帰ってくる喜びを語った。
香川は3度PFFアワードに入賞したあと、脚本家として『クヒオ大佐』(09)や『羊の木』(18)で吉田監督とタッグを組んでいる。上映当日には入賞作品3本に加え、今回の企画のために27年ぶりに取り下ろした新作短編『セグウェイ』も上映されるとのことで、その作品には吉田監督も俳優として出演しているとか。吉田監督は「演技はしましたけど、カットになってるかも」と、照れ笑いを浮かべた。
同企画ではほかに、原恵一監督と橋口亮輔監督が共に敬愛している木下恵介監督について語る対談が昨年に引き続き行われ、さらに劇映画の枠を飛び越えて、テレビディレクターとして活躍する稲垣哲也と佐々木健一がテレビ番組の創作のコツについて話をすることも予定されている。
他にも、上映決定の第一報に大きな反響が起こった名匠ロバート・アルドリッチ監督のレトロスペクティブも開催。デビュー作『ビッグ・リーガー』(53)や代表作である『キッスで殺せ』(55)と『何がジェーンに起ったか?』(62)など、なかなか観ることができなかった貴重な10作品が上映される。
そして招待作品部門で行われる、今年5月に亡くなった撮影監督の田村正毅氏の追悼企画に、仙頭武則プロデューサーと共に登壇する青山監督は「はちゃめちゃな人ではちゃめちゃな仕事だった。異人であり偉人でもあり、人生を謳歌するように謳歌させてもらいました」と田村氏との思い出を語りった後、アルドリッチ監督の魅力について熱弁を振るう。
「これは大事件!今回上映されるのは代表作。硬質な、という言葉で表現される傑作揃い」と興奮気味に語り、さらに会期中に3回上映が予定されている『クワイヤボーイズ』(77)について「これはすごいことですよ!」とさらに盛り上がる。アルドリッチ監督特集を始め、今回の「ぴあフィルムフェスティバル」では『未体験の人に初体験』をキーワードに、学生当日券が500円で販売される。この機会にまだ見ぬ傑作と出会ってみてはいかがだろうか。
取材・文/久保田 和馬