『私の優しくない先輩』で川島海荷に火をつけた監督の演出とは?
CM、テレビドラマで人気上昇中の若手女優・川島海荷が、はんにゃの金田哲とW主演した青春ラブコメディ『私の優しくない先輩』(公開中)で、新たな魅力を開花させ新境地を開いている。
彼女演じる女子高生・西表耶麻子(いりおもてやまこ)は、憧れの南先輩との恋を夢見ている。先輩とすれ違うだけで幸せな気持ちになり、何度も書き直したラブレターはポケットの中。ところが、そのラブレターの存在を彼女が苦手とする、クサくて、ウザくて、暑苦しい!不破先輩に知られたことから、状況は一変。頼みもしないのに「告白大作戦」を始動させ、耶麻子もその作戦に巻き込まれてゆく。
このクサくて、ウザい不破先輩を演じるのが、はんにゃの金田哲。撮影現場でもムードメーカーになっていたようで、コメディ初挑戦の川島海荷も「コミカルなシーンは、金田さんが演じやすい空気を作ってくれていたので、すごく演じやすかったです」と語る。
コメディといえば、オーバーなリアクションや動きも楽しみどころの1つだが、今までシリアスなドラマものが多かった川島は「表情の変化や独特のテンポに苦戦した」と振り返る。なかでも彼女が苦戦したのが、不破先輩にマット上に投げ出されるシーン。脚本に書かれていた、ありえない姿勢で逆立ちする耶麻子を体現するため、練習を重ね見事にやり遂げている。
「負けず嫌いなんです。だから『できないの?』って言われると悔しくて」と話す彼女は、あるシーンで山本寛監督の優しくない演出に「本気で悔しい思いをした」のだとか。「あの時は本当に悔しくて、壁を監督に見立てて蹴りました」と川島。その姿を横目で見た山本寛監督は「シメシメ」と思ったそうで「(闘志に)火がついたその後のテイクが見違えるぐらい良くて、撮影の藤井さんとほくそ笑んでました」と明かした。
もちろん悔しい思いだけでなく「思い出がたっぷりすぎて」と振り返るほど、楽しい経験もした彼女。劇中で披露するたこやきの腕前もあがり、表情のバリエーションも増えたそう。「いちばん印象に残ってるのが撮影初日。劇中でも物語のカギを握る大事なシーンだったんですけど、雨の中、川の中に入らなければならなかったんです。しかもとても寒い日で。金田さんたちと一緒に、ストーブで沸かしたお湯をたらいに注いで足湯して、あれは良い思い出です」と彼女は弾ける笑顔で振り返った。
山本監督が「物語冒頭の耶麻子は、ウザいぐらいのナレーションで自分の気持ちを説明しているんですけど、不破先輩と対峙するうちにそれが生の声に変わってゆく。そこが見どころです」と語れば、川島も「現実逃避したくなったり、めんどくさいことにかかわりたくなかったり、同性に嫉妬しちゃったり、恋する気持ちだったり。女の子なら共感できる気持ちが、この映画では描かれていると思うから、楽しんでほしいです」と語る。
ふわふうわ(不破風和)なのに、優しくない先輩の名言(迷言)が、爆笑とともに突き刺さる本作。夏の暑さに負けないあつ〜い映画に仕上がっている。【MovieWalker/大西愛】