『ペンギン・ハイウェイ』宣伝Pが明かす声優決定の信念「“作品本位”を大事にしたい」
森見登美彦の原作をアニメーション映画化する『ペンギン・ハイウェイ』(公開中)。主人公の少年・アオヤマ君役には、若手女優の北香耶が抜てきされた。キャスティングも映画宣伝の大きな鍵を握るが、本作の宣伝プロデューサーである東宝株式会社の弭間友子は「キャスティングはものすごく大事なので、時間もかけました」と吐露。『君の名は。』(16)の宣伝も担当し、敏腕として知られる彼女だが「宣伝的には知名度のある方を起用したくなりがちなんですが、“作品本位”というところを大事にしたい」と想いを明かす。アニメ映画、キャスティングの苦労に迫る。
「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」など数々のベストセラー作品を生みだした森見の小説を、気鋭のアニメーションスタジオ、スタジオコロリドが映画化する本作。知的好奇心旺盛な小学4年生のアオヤマ君が、気さくで胸の大きな憧れのお姉さんと、街に現れたペンギンの謎を解こうとする姿を描く。アオヤマ君役をドラマ「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」のヒロイン役で注目を集めた北香耶が、お姉さん役を『鉄コン筋クリート』(06)や『花とアリス殺人事件』(15)など、声優としても高い評価を得ている女優、蒼井優が演じている。
観客の目が肥えているうえに、インターネットの普及もあり、鑑賞後の「役にハマっていた、いなかった」という感想もすぐに拡散される。キャスティングが合っていなければ、逆に宣伝のマイナスになることさえある。「キャスティングはとても大事なので、ものすごく苦労します。早い段階で、私も話し合いの場に入らせてもらいました」と弭間。「宣伝としてわかりやすいのは、旬の人を起用するということなんですが、やっぱり、観る方にとっても『ああ、これは旬の人を使っているんだ』とわかってしまうものなんですよね。実写もアニメも作品の数がとても多いので、同じ人が出てきてしまうということにもなります」と問題点をズバリと語る。
そんななか、彼女が信念として掲げているのは“作品本位”という想いだ。「宣伝的には、知名度のある人を使いたくなりがちなんです。媒体の方に取材をお願いしても『誰?』となってしまうこともあります(苦笑)。ですから、もちろん知名度も大事」と打ち明けつつ、「でも私は、いつも『きちんとオーディションをして、その役、その作品に合う人を選びましょう』と言うようにしています。“作品本位”というところを大事にしたい」と真摯なひと言。それは大ヒットを果たした『君の名は。』も同じで「上白石萌音さん(三葉役)も、成田凌さん(勅使河原役)も、当時はいまほど知名度はありませんでしたが、きちんと台本をお渡しして、そのキャラクターを演じていただくというオーディションを経て、選ばせていただきました」と話す。
『ペンギン・ハイウェイ』のアオヤマ君のキャスティングも「ものすごく時間をかけた」そう。「オーディションには、たくさんの方に参加していただきました。北さんはすばらしかったですね」と北の演技に惚れ惚れで、さらにはアオヤマ君とお姉さんのバランスも重要だったという。製作発表会見でお姉さん役の蒼井が「完璧」と北の演技について語っていたことも印象的だが、劇中では、アオヤマ君とお姉さんが、なんとも心地よい掛け合いを見せている。
弭間は「アオヤマ君役をオーディションである程度まで絞り込んだところで、お姉さん役のキャスティングをするようにしました」とコメント。「2人の掛け合いのシーンが多いので、キャラクターとしての演技に加え、お姉さんとアオヤマ君の会話の声質にも気を配りました。声が似通ってきてしまうと、どちらが話しているかわからなくなってしまいますから。しっかりとしたキャスティングができたと思っています」と胸を張っていた。
取材・文/成田 おり枝