「感慨深そうにすると泣いちゃう」柄本佑、笑顔で『きみの鳥はうたえる』初日

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「感慨深そうにすると泣いちゃう」柄本佑、笑顔で『きみの鳥はうたえる』初日

『Playback』(12)や『THE COCKPIT』(15)で日本のインディーズ映画界に新風を巻き起こした三宅唱監督と、若手実力派俳優たちがタッグを組んだ『きみの鳥はうたえる』(公開中)の初日舞台挨拶が1日、新宿武蔵野館で開催。柄本佑、石橋静河、染谷将太、足立智充、山本亜依、柴田貴哉、そして三宅監督が登壇した。

『海炭市叙景』(10)や『そこのみにて光輝く』(14)の原作者として知られる佐藤泰志が81年に発表し、芥川賞候補になった同名小説を映画化した本作。函館郊外の書店で働く主人公の「僕」と共同生活をする失業中の静雄、そして同じ書店で働く佐知子。3人が過ごす何気ないひと夏の日常を描きだした青春映画だ。

以前出演していた舞台の公演期間中に、三宅監督から直々にオファーされたことを振り返る柄本は「クランクインしたのは去年の6月でしたけど、僕の中では3年つづいていた感じ。なので今日は感慨深い」と明るく述べ「感慨深そうにすると泣いちゃうから。こんな感じでさっぱりいきたい。『僕』が終わって、これから皆さんの元へ行く記念すべき日なので、よろしくお願いします」と演じた役柄への愛情をのぞかせた。

函館で行われた撮影の雰囲気を訊かれると柄本は、両隣にいた石橋と染谷に「いま考えてみると、結構疲れたよね」と語りかける。そして「わりとわちゃわちゃしていたような気がします。3人で戯れているところは、監督も交えて戯れるという演出があった」と明かし「真剣に疲れたので、現場はいい空気で初日から終わりたくないなと感じる豊かな現場でした」と満足そうな表情。さらに石橋も「函館に着いた日から全部の時間が大事な時間だった」と振り返り、染谷は撮影中に柄本が笑わせてきたことや「ぶっ飛んでいた」というエピソードを明らかにした。

そんななか「すばらしい俳優たちとこの映画を作ることができた。佐藤泰志さんの小説という大きな器の中で自由に遊ばせてもらったし、函館の多くの人に協力してもらった」と本作を手がけた喜びを熱弁する三宅監督は、作品を観終えたばかりの観客に「映画の最初に『函館シネマアイリス20周年』と出たと思います」と話しはじめる。

「これは『函館シネマアイリス』という映画館が、町の人と一緒に映画を作ろうというところからはじまった企画です。映画館もどんどん減って、映画を観る人が減って行く中で、映画館が映画を作ろうと企画し、その仲間に加えてもらった。こうして映画館という場を中心にして、皆さんと色々な体験をできることを本当に嬉しく思うので、その輪をもっともっと拡げていけたらと思います」と力強く映画愛を語り、舞台挨拶を締めくくった。

取材・文/久保田 和馬

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