海外ドラマは「黄金期」、生き残る4つの動画配信サービスは?
NetflixやAmazonといったオンデマンドのストリーミング・サービスが、ドラマの視聴方法として主流化しているアメリカ。それに伴い、急増するドラマの本数や、大手スタジオがストリーミング配信に着手する傾向は、いずれは転機を迎えると予想する者が居る。
その1人が、フォックス・エンターテインメント・グループ傘下の有料テレビ局FXのCEO、ジョン・ランドグラフだ。ThePlaylistの記事によると、米バラエティが開催したエンタテインメントとテクノロジーのサミットで、ランドグラフは「今後ストリーミング・サービスとして成長を見せるのは、Netflix、Amazon、ディズニーと、(今年合併となった)AT&T/タイムワーナーの4社であろう」と予想した。
4社の中に、HuluやCBSAllAccess、YoutubeやGoogleなどが含まれていないのは驚きだ。ランドグラフは「この4社のみが権力を掌握すると言っている訳ではないが、間違ってもこの4社は出遅れないはずだ。もちろんYoutubeもオリジナル番組の製作をしているし、Facebookもストリーミングに新規参入を試みている。アップルだってそうだ。しかし、50億ドル、100億ドルといった単位の投資ができる会社は、おそらくこの4社だろう…。コムキャスト(AT&T/タイムワーナー合併の大元となる親会社)が大規模なストリーミング・サービスを開始しないはずがない」と述べた。
ランドグラフは以前にも「テレビドラマの黄金期と言われる現在だが、実は上辺を施しただけの"金箔"期でしかない」と発言。ドラマ番組の数が増えれば増えるほど、今後業界全体に悪影響を及ぼすと、シニカルな見解を述べている。番組の数や選択肢が多すぎると、視聴者もストーリーに対して驚きや感動を感じられなくなってしまうと言うのだ。
FXが調査した情報によると、17年にリリースされた英語のテレビドラマの数は前年から7%増しの487シリーズ。2018年には520シリーズ以上になると予想されている。TheEconomistの記事によると、Netflixは今年、コンテンツの制作や配信権取得に120~130億ドル(約1兆3000億円以上)を注ぎ込むそうだ。これは世界中の映画やテレビスタジオに比較しても最高額だ。
ランドグラフ氏は「今後この勢いがピークを迎えると同時に、業界はその大きな残骸を目撃する事になる」という。各社がこれ以上テレビドラマに資金を投資出来なくなると同時に、転機が訪れるというのだ。
またランドグラフ氏がCEOを務めるFX局は、今年に入ってジェームズ・クラベルの小説「Shōgun」を原作にした1980年のドラマ「将軍 Shōgun」のリブート版を、全10話のリミテッド・シリーズとして製作することを決定した。80年版にはジョン・ブラックソーン、三船敏郎、島田陽子らが出演し、81年のプライムタイム・エミー賞作品賞(ミニシリーズ部門)を受賞した作品だ。リブート版は西洋からの一方的な視点の描写でなく、日本の視点と日本人キャストの配役を重視した作品になるという。
実はFXも独自のストリーミング・サービス「FX+」を展開しているが、ディズニーに買収されたフォックス傘下のテレビ局であるため、今後ストリーミング戦争にどう関わってくるかは明白ではない。FXは評論家からも好評の「アトランタ」、「アメリカン・ホラー・ストーリー」や「ジ・アメリカンズ」、6年続いた「サンズ・オブ・アナーキー」など、安定したドラマ番組の製作をしている。同社は、番組の数や投資額ではなく、独自の視聴者が求めるコンテンツを安定して送りつづける事で、業界の変動期最中の生き残りに懸けているのかもしれない。
LA在住/小池かおる