『アンダー・ザ・シルバーレイク』監督が明かす、驚きの脚本テクニックとは?
「アメイジング・スパイダーマン」シリーズや『ハクソー・リッジ』(16)で知られるアンドリュー・ガーフィールドが主人公のサム役を演じ、“光溢れる街”ロサンゼルスに潜む陰謀を解明していく『アンダー・ザ・シルバーレイク』(公開中)。メガホンをとった俊英デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督は、都市伝説やあらゆるカルチャーが交錯する本作について「僕がポップカルチャーに対して妄執的に持っている知識と、それに対するリサーチを組み合わせた作品だ」と表現する。
“大物”になることを夢見てロサンゼルスのシルバーレイクで暮らすオタク青年のサムは、ある日隣人の美女サラ(ライリー・キーオ)にひと目惚れ。しかしデートの約束を取り付けた矢先、彼女は忽然と姿を消してしまう。彼女の部屋に残された謎の記号、時同じくして街を騒がせる大富豪の失踪や、夜中になると現れる“犬殺し”。そして街を操る謎の裏組織の存在。そんななかサムは重要な暗号を発見し、徐々にシルバーレイクの闇へと近付いていく。
“サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓』(54)や『めまい』(58)から直接影響を受けたと語るミッチェル監督は、ほかにもデヴィッド・リンチやフリッツ・ラング、ミケランジェロ・アントニオーニ、ブライアン・デ・パルマ、ロバート・アルトマンら、インスパイアされた巨匠たちの名前を挙げる。「これまでずっと映画を観て、そして愛してきた。他のアートや音楽も含めて、自分が大切にしてきたものを元に、自分なりの作品を作り上げているんだ」と、ポップカルチャーに対する熱い想いを語った。
監督デビュー作『アメリカン・スリープオーバー』(10)で頭角を現し、続く『イット・フォローズ』(14)で大きな注目を集めたミッチェル監督は、いま最も新作が期待されている監督の一人。そんな彼の卓抜した才能を特に感じさせるのが、本作の魅惑的で複雑怪奇なストーリーをわずか1日足らずで書き上げたというエピソードだ。
「いつも脚本を書く時はすごく速いんだ。アイデアが浮かぶと、すぐに自分のなかでブレイクダウンしてストーリーにする。多分これは、何年も脚本を書いてきた練習の成果だと思っている。最初のころに書いた脚本は、とても人に見せられるようなものになっていなかったよ」と苦笑する。
そして「今回の脚本は、ある種の映画的な法則や、公式に則ったものではない。この物語が持っている、内なる倫理のようなものに従って書いたんだ」。こうして生まれた脚本が、アカデミー賞作品賞受賞作『ムーンライト』(16)を手掛けたプロデューサーのアデル・ロマンスキーや、本作で主演を務めたアンドリューを魅了したのだ。
そして、今後さらなる活躍が期待されているミッチェル監督は、ともに映画界を牽引していく同世代の監督たちについてこう語る。「同世代には才能がある監督がたくさんいる。でもみんなお互いをライバルだとは思わずに、自分が作りたい世界を作るためだけに葛藤を続けているはずだ」。そんなミッチェル監督自身に、特に気になっている監督はいるか?と訊ねてみると「言い始めたら止まらないよ」とためらいながら「日本人ならば、園子温監督だね」と明かしてくれた。
取材・文/久保田 和馬