役所広司、『孤狼の血』を振り返り「ダーティな街に降りた天使だと思って演じていた」 |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
役所広司、『孤狼の血』を振り返り「ダーティな街に降りた天使だと思って演じていた」

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役所広司、『孤狼の血』を振り返り「ダーティな街に降りた天使だと思って演じていた」

現在開催中の第31回東京国際映画祭にて、第69回日本推理作家協会賞に輝いた柚月裕子の警察小説を映画化したバイオレンス映画『孤狼の血』の上映とQ&Aが実施され、主演の役所広司と白石和彌監督が出席した。現在の日本を代表する作品の数々を、映画祭独自の視点でセレクションするJapan Now部門にて、‟日本の今”を代表する俳優として役所が選出され、「映画俳優 役所広司」として特集上映が実施されている。

そのうちの一本として上映された『孤狼の血』は、暴力団対策法成立直前の昭和63年の広島のとある街を舞台に、刑事とやくざたちの熱い生きざまが描かれる。手段を選ばない捜査方法でやくざとの癒着が噂されるベテラン刑事を役所広司、その部下となる新人刑事を松坂桃李が演じた。

上映を終えて「観に来てくださいましてありがとうございます。正義の味方の刑事をやりました役所です(笑)」と冗談を交えて挨拶した役所。「正義なのか悪なのか天使なのか。どこかで(この役は)天使とおっしゃっていたような気がしますが」とMCが突っ込むと、「ダーティな街に降りてきた天使だと思って演じていました」と役所は答え、白石監督は「僕は愛を持った悪徳刑事だと思っていました。まさか、天使のつもりで演じているとは思っていなかったですね(笑)」と笑顔を見せた。

また、白石監督は「本作の人物たちは昭和の匂いのある、いま持っていない空気を持っていたと思う。清濁併せ吞むところがあったと思ったのではないか。そういった人間のグレーな部分を見つけたい想いで撮りました」と作品についてコメント。

一方の役所は「原作がハードボイルドでかっこいいんですが、白石監督の描いた脚本を読むとなおさらハードだったんですよ。街で頻繁にタンを吐く天使だったんですね~」とユニークな言葉で、脚本のハードさ、キャラクターの強さを伝えた。

そして、魅力を感じている部分について「(自分の演じた役は)この街のことはよく知っていて、セリフにもあるように、やくざと刑事の間の綱渡りをずっとしている男なんですが。この街で一番悪いのは警察なんですけど、市民のためになんとか綱渡りをしてきて、その中で若く、次を託せると思える男と出会って。そんななかで、大上がかっこよく、一番魅力的だと思ったのは、やっぱりいつ死んでもいいと思って生きていたところ。僕としてはそこが魅力的でしたね」と解説した。

続いて、観客からの質問を受けるシーンになると、「豚のウンチの味がどうだったか聞きたい?」とまたもやジョークを飛ばす役所。「演じていて、自分に戻れないという役者さんもいますが、役が抜けないということはないですか?」と問われると、「僕は撮影が終わりという日にキャラクターがどこかへ行ってしまいますね。うちの妻は『変な奴が帰ってきた』という感じになるらしいですけどね(笑)。そう聞くと、どこかに役をつなぎとめている部分があるのかもしれませんね」と回答。

「松坂さんと演じていて心に残っているシーンがあれば教えてください」と質問されると、「撮影が始まる前に、クラブでのシーン(役所演じる大上を、松坂演じる日岡が踏み留まらせようとするシーン)をワンカットでいくと聞いて、冗談だろうと思ったんですが。でもあそこは重要なシーン。やっぱりワンカットの力ってすごいなと思いました。あとは、松坂さんが駆け寄ってきたら、僕が死んで膨らんでいたでしょ?あのシーンのために、僕は数日で太ったんですよ(笑)」と、役所は“注目すべきシーン”をピックアップした。

最後に役所は「人間というのはすごい多重構造でできていて、セコイところも、暑苦しいところも、優しいところも全部が真実でできていて。それが一つになった人間になると、結構おもしろい人物ができるのかなといつも思う。今回の大上という人間も非常に複雑でおもしろい人間だと感じて演じていました」と、改めて役の魅力について熱く語っていた。

取材・文/平井あゆみ

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