AV女優役に挑んだ新星・安井紀絵をピンク四天王の佐藤寿保監督が絶賛
ピンク四天王の佐藤寿保監督が、日雇いでセックスを売る“企画AV女優”のインタビューを綴ったノンフィクションインタビュー集を映画化した『名前のない女たち』(9月4日公開)。本作で、映画初主演を飾り、体を張った演技に挑んだ期待の新星・安井紀絵と佐藤監督に、ハードだった撮影現場の裏話を聞いてみた。
安井が演じるヒロイン純子は、地味なOLだったが、ある日を境にコスプレ女優ルルとなり、自分の居場所を模索していく。彼女の抜擢理由について佐藤監督はこう語る。「日常の純子と非日常のルルの二面性や陰陽が出る女の子、新鮮でまだ色がついていない女の子ということで、安井さんに決めました。映画初主演ならではの純粋さや不器用さ、そして勘の良さをオーディションで感じたんです」。
安井は、相当プレッシャーを感じたと言う。「右も左もわからないところからスタートして、映画ってこんなに難しいんだって実感しました。頭の中ではこうしたいと思っていても、実際にできないことがもどかしくて」。彼女は、現場で何度も悔し涙を流したとか。
本作のもうひとりのヒロイン綾乃役に、映画や舞台で活躍中の佐久間麻由。綾乃はヤンキー上がりの先輩AV女優だが、やがてルルに心を開いていく。特に、ふたりが無邪気にビールかけをし、全裸でじゃれあうシーンが印象的だ。
佐藤監督は「感情が高ぶり、心身共に裸になるというシーンで、長回しの一発撮りをしました。ふたりの演技のキャッチボールが非常に面白かったです」と語る。すると安井は当時をふり返り、「佐久間さんと現場でお会いしたのは、あの時が初めてで。お互い手を取り合って、頑張ろうねって言いながらやりました」と言うと、監督は「普通だったらそんなスケジュール組まないよね」と苦笑い。安井は「でも、あの撮影があったからこそ、私と佐久間さんの距離が一気に縮まったので、良かったです」と笑顔でコメント。
演じた純子と自分は、共通点が多かったと語る安井。「人と目を合わせるのが苦手なところ、自分の殻に閉じこもり、思いを伝えられない点が私と似ていました。でも本作に出演して、人生って自分の行動でどうにでも変えられるから、なるべく自分からいろんなことをやり、いろんな人と交流してみようと思うようになりました。今までは苦手だったことも進んでやってみると、自分自身に対する見方が変わりましたね!」。
純子と、女優・安井紀絵の成長がシンクロしている点は非常に興味深い。佐藤監督も「確かに、役者としての安井さんと、ヒロインが置かれている立場がオーバーラップしている部分があります」と語り、さらにこう続ける。「本作で伝えたいのは、誰しも閉塞感を感じながら生きていく中で、少しでも心の笑顔を自ら見出してほしいという願望、希望ですね。この映画も決してエンドではなくエンドレスなわけで。安井さんにも本作をきっかけに、新しい世界が広がることを、監督としては願っています」。
「目指しているのは、女優、声優、舞台女優として、マルチに活躍する戸田恵子さん」と、目を輝かせて語る彼女。佐藤監督が企画AV女優の性と生を赤裸々に描いた本作は、今を生きる等身大のヒロイン純子と、女優・安井紀絵の成長期でもある。それをしかと受け止めてほしい。【Movie Walker/山崎伸子】