遠藤憲一と宮藤官九郎が、豪華俳優陣をあて書きしたドラマで「勉強させていただきます」
WOWOWプライムで11月12日の24時より放送される連続テレビドラマ「遠藤憲一と宮藤官九郎の勉強させていただきます」は、豪華俳優陣が、その俳優をイメージしてあて書きされた脚本で本人役を演じるという、これまでにないユニークな構成のワンシチュエーションコメディだ。主演の遠藤と、脚本を手掛けた宮藤にインタビューし、アドリブ満載のライブ感あふれる撮影現場について話を聞いた。
遠藤が劇中劇で扮するのは、情にもろいベテラン刑事、その名も諸井情(もろいじょう)役。諸井が連続殺人犯“エスカルゴ”を追っていくというドラマだが、撮影直後にコンプライアンスの問題などが発覚し、その場で撮り直しを強いられる。すでに遠藤の共演者は帰ったあとで、急遽、たまたま居合わせた大物俳優たちに、遠藤自らが出演交渉をし、同じシーンを再撮していくという設定だ。
つまり、オンエアされる「遠藤憲一と宮藤官九郎の勉強させていただきます」1話分は、遠藤の相手役に本来配役されていた人物が演じるテイク1と、そのあとのやりとりに加え、大物俳優が遠藤の相手役の代役を務めて撮り直すテイク2をセットにしたものだ。相手役のゲスト俳優陣がなんとも豪華な顔ぶれで、第1話が小栗旬、第2話が仲里依紗と加藤諒、第3話が高畑淳子、第4話が野村周平、第5話が水野美紀、第6話が高嶋政伸、第7話が桃井かおりというラインナップ。各回、小栗たちゲストも、宮藤によってあて書きされた本人役で、遠藤との即興ありきの芝居を披露していく。
遠藤は、宮藤の脚本を読んだ段階でゲラゲラ笑ってしまったと言う。「すごいぶっ飛んだものを書かれるんだなと。台本の段階で腹を抱えて笑うことってあんまりないんですが、本当におもしろくて。撮影が始まっても、芝居をしながらつい笑い転げてしまったこともあります。僕は今回、受けの芝居でしたが、ゲストの方々が突発的にすごいエネルギーをぶち込んでくるので、つい吹き出してしまいました」。
そう語る遠藤のリアクションも本作の見どころの一つで、宮藤はテイク1での遠藤の演技を見て、感銘を受けたそうだ。「『ああ、こっちもちゃんとやるのか!』と。テイク1はテイク2への前振りだと思っていたのに、遠藤さんは悲しいシーンで、本当に涙を流されていたんです。その時、諸井情というキャラクターがすでにできたと思いました」。
遠藤は「台本がそうなっていたから、僕はそのまま演じただけです。テイク1がリアルで緊張感があるほうが、テイク2がより崩れて、笑えるんじゃないかと思いました」と脚本段階での完成度を称える。
宮藤は、テイク2を演じるゲスト俳優をあて書きするにあたり、少し不安を感じていたと明かす。「ゲストは、あまりご一緒したことのない俳優さんが多かったので、怒られたら嫌だなと思って、不安も少しありました。でも、書き始めたら、過去にあまり接点のない方々だからこそ、パブリックイメージで突き進むことができて、気が楽になりました。特に、桃井かおりさんが出てくれると聞いた時は、どうしようかと思いました」。
過去に桃井と共演経験があった遠藤も「アイデアをがんがん膨らませてくる女優さんなので、台詞も変えてくるから、現場で勝負だなと」と心して挑んだそうだが、現場では予想外の展開に。「桃井さん相手だから、僕もそこまで台詞を入れ込まずに現場入りしたんです。でも、始まったら、桃井さんが一字一句、台詞を間違えずに言うので、僕のほうが焦って少しパニクりました (苦笑)。桃井さん、きっと1周回っちゃったんだと思います。宮藤さんの台本をもっとおもしろくするにはどうすればいいんだろう?といろいろ考えた挙げ句、台本のままでいこう、となったんじゃないかな」。
宮藤も「僕もきっと台詞が変わるだろうなと思っていたんです(苦笑)。そしたら、台本そのままだったのでびっくりしました。確かに、現場で桃井さんも『そのままやったほうがいいと思った』と言ってくださったんです」と驚きを隠せなかったよう。
本作は、遠藤と宮藤が「名優たちの役作りを勉強する」というコンセプトで作られたドラマだが、遠藤は「すごく勉強になりました」と文字どおりの手応えを感じた様子。「今回の僕はとにかく自分自身をフラットにして、相手の芝居をちゃんと受け止め、感じたものを出していく感じでした。難しかったけれど、すごく楽しかったし、俳優として新しい領域に行けた気がします。その影響で、ほかの現場でも自分が変わり始めたことを感じるので、僕もまだ伸びしろはあったのかなと。これからも新しいチャレンジをしていきたいです」。
また、宮藤も「遠藤さんのリアクションは、これまであまり見たことのないものでした」と感心したそうだ。また、WOWOWで放送されることについて「コンプライアンスの問題うんぬんは本当にある話で、今回はそこをいじっているから、地上波では通らない企画だったんじゃないかと。おもしろいものを作ろうとして、新鮮な気持ちで取り組めたので、ぜひ1話目から続けて観てほしいです」と締めくくった。
取材・文/山崎 伸子
全7話・第1話無料放送。
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