小池栄子、山田孝之を「天才」とベタぼめ!『乱暴と待機』インタビューPART1
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の本谷有希子×『パビリオン山椒魚』(06)の冨永昌敬監督が贈る『乱暴と待機』の公開が10月9日(土)に迫るなか、本作に出演する美波、小池栄子、山田孝之にインタビューを行った。
――原作は読まれましたか?
小池「もらったけど、読んでないんです」
山田「読んでないです」
美波「読みました。内容はかなり違いました。だって、番上(山田孝之)は職に就いているし」
――物語そのものがすごくおもしろいと思うのですが、台本を読んでまず演じるキャラクターについてどう思われましたか?
小池「あずさはとってもわかりやすくて、普通の女の人が抱く感情の流れとそんなに反していないから、そういった部分では理解するのにそんなに苦労はなかったですね」
――共感できる部分はありましたか?
小池「寂しくて孤独なのに、予感的中という感じで最も行ってほしくないタイプの女の子・奈々瀬(美波)と番上が関係を持ってしまって。あんなに暴力的なことはなかなかないと思うけど、そこに嫉妬して、でもその苛立ちをどこにぶつけていいのかわからない、その感情に『素直な子なんだな』って感じました」
美波「私は、台本を読んだとき全然理解できなかったんです。最初は、しゃべり口調も変だし『なんなんだろう』って疑問があったから、原作を読んで、理解するのに手助けしてもらった部分がありました。原作は主観で話が展開していくから、納得できて行動原理がわかっていくんですよね」
山田「番上は自分の感情のまま、素直に生きてて、良いんじゃないですか。番上に限らず、みんな動物っぽい。人間の本来あるものだけで生きたら、人間どうしの関係性とかやっていけない。あずさは傷害や器物損壊、英則は監禁、番上は不倫・浮気をやってるけど、でもみんな世の中にあることを一気にまとめてやってるから、すごく特殊な感じに見えるだけで、すごく普通に当たり前に起きることだと思う」
――そういう意味でも、関係性を描いたドラマとして考えると、誰と誰の関係性が一番興味深かったですか?
山田「番上と英則ですね。すごく近くにいるのに、お互いをどう見ているのか全然わからない」
小池「男同士の関係って女には想像つかない。奈々瀬とあずさは、わかりやすいし、そこに男が絡んでくるとなおさらね」
――山田さんは英則のキャラクターをどう思われますか?
山田「関わりたくはないですけど、おもしろいんじゃないですか」
――では男として、英則はどうですか?
山田「付き合って束縛する人とかもいるし、それがただ度が過ぎてるだけのような気もするな」
――番上を演じるうえで、普段やれないことをやれるキャラクターとして楽しんだのか、それとも山田さんの中にある引き出しを開けて演じたのですか?
美波「(山田に対し)こういう質問、多いですね(笑)」
山田「まあ、世間的にあんまりイメージ良くないから」
美波&小池「いやいやいや!そんなことないよ!」
美波「さっきだって、舞台挨拶で『山田くーん!』って言われてたじゃない!」
山田「まあ、そうですけどね(苦笑)」
――映画が素晴らしかったからですよ。すごいリアルといいますか。
山田「そりゃあ、俺も若い頃は、後先考えずに遊んだこともありましたけど、今はないですよ」
――じゃあ、ちょっとわかるところもありますか?
山田「いや、番上は人の気持ちを考えなさすぎで、ちょっと酷いですね」
小池「浮気がばれた時、あずさじゃなくて、奈々瀬をかばったもんね」
山田「あの瞬間にこれまでの出来事や立場がパッて切り替わっちゃうんですよね」
美波「(番上って)意外と器用なんだ」
山田「『やばいやばい、どうしよう、なんか言い訳しなきゃ』ってなってたけど、気付いたら、『この人(奈々瀬)がこの人(あずさ)にいじめられてる、助けなきゃ』って。あの切り替えはすごいですね」
小池「番上らしい発言や行動だよね」
――男性ってそういうものなのかなと思ってしまうぐらいの説得力がある場面ですよね?
山田「監督が『考えてやっているんではなく、自然とやってしまっている。そういうキャラクターで番上をやってほしい』っておっしゃったので、そういうところを出す場面なのかなと。考えてやってる人だったら、お互いの顔色をうかがって行動するだろうけど、そうじゃなくて『番上は抜けてて、そこが愛くるしく見える人でやってほしい』って言われたから、『あ、こういうことなんだろうな』と思いました」
小池「『うーん、好きだー、この人! 悔しいけど、ここなんだよ、この人を切れない理由』って、あずさは悲しいけど、そう感じたと思います。普通は、相手の気持ちを思ったらこういう行動は取れないだろうっていうようなことを、(番上は)見事に裏切っていく感じ。多分、10回に1回はちゃんと答えてくれる瞬間があって、そこが番上の魅力で、あずさは一緒にいたんだろうなと、演じてる時にすごく感じました」
――小池さん自身は番上くんみたいな人はどうですか?
小池「私はすごく好きですね。できすぎる男って気持ち悪くて。私は男性に対して、子供がそのまんま大人になった感じで、時には失礼だったり、非情なことをしてしまうのもありだって思う。そこが魅力で、型にはまらない感じ。キレイに型にはまって生きていく男性はあまり好きじゃなかったりするから、私は番上くん派です」
――美波さんは、番上くんをどう思いますか?
美波「(自分にとって)プラスにならないような気がしちゃう。こういうタイプの人とは出会うことがまずないかもしれないですし、話してても会話が続かないと思いますね」
山田「意外といるんだけど、出会っても引っかかってないし、興味もわかないだろうね。ああいう人は表面だけで、その場その場でしかないから、多分会話が成り立たないよ。番上の『積極的に麻痺していこうよ~』っていうあのセリフ、すごいよね」
美波「説得力ありますよね、天才よね(笑)」
小池「快楽主義者だよね」
山田「でも、ああいう人に呑まれていく人もいっぱいいるわけだから」
小池「そうだよね。そのシーンも含め、やっぱり山田くんは天才だと思った。昔から山田くんを見ていて、本当にお芝居の上手な方だなと思ってたけど、そういう人にしか見えないっていうのは本当にすごい。いかにこの方が上手いかってことを実感させられた作品でしたね」
山田「(照れながら)地でやっただけです(笑)」