『国家代表!?』のハ・ジョンウと監督が語る「こんなのあり!?」の撮影秘話
感動の長野オリンピックの裏側で、寄せ集めのトホホなスキージャンパーたちが大奮闘。韓国のスキージャンプの国家代表チームの実話を基にした映画『国家代表!?』(10月23日公開)は、最高に愉快なスポ根コメディだ。本作で来日した主演俳優ハ・ジョンウとキム・ヨンファ監督にインタビューし、驚きの撮影秘話を語ってもらった。
クライムサスペンス『チェイサー』(08)で研ぎ澄まされた演技を見せていたハ・ジョンウだが、本作では幼い頃にアメリカに里子に出された元米国アルペンスキージュニア代表のボブ役を時に熱く、時にコミカルに好演。本作の脚本には「ある意味、ありふれた物語かもしれないけど、とても強い印象を受けました。読み進めていく内に、胸がいっぱいになっていったんです」と感激した様子。
監督はコメディ作品『カンナさん大成功です!』(06)のヒットメーカー、キム・ヨンファ。“国家代表”として急遽集められたスキージャンパーたちが、練習環境が整ってない中、プールの滑り台で大滑走したり、車の上でスピード体験したりする姿が滑稽で笑える。あれも実話なのか?と尋ねると「実は、実際の選手たちの方がもっと劣悪な環境の中、練習していたんです」と監督が教えてくれて、さらにびっくり!
「描きたい内容をどれくらいのさじ加減で表現したらいいのかは、いつも悩むところです。実際に選手たちの話を聞いたら、当時はひどい状況だったらしくて。それをそのまま表現したら『こんなのあり!?』と逆に言われそうだったので、少し和らげて変えた部分もあるくらいです。自分はドキュメンタリーの監督ではないから、楽しんで見られるような工夫をして撮影をしました」。
実際にスキージャンパーとしての訓練を積んだハ・ジョンウも、訓練してみた感想をこう語った。「一番大変だったのはスキーでかがむ姿勢です。下半身を鍛える訓練をやりましたが、あの姿勢がなかなか保てなくて。とにかく最初から最後までその訓練をしていました」。
本作を経て、ハ・ジョンウと監督との間には熱い絆が生まれたようで、監督がそのエピソードを明かしてくれた。「撮影が始まる前に、ふたりだけでお酒を飲んだ時、彼は涙を流しながら宝物のような経験談を語ってくれたんです。俳優としてよりも、一人の人間として、彼がどんなふうに成長してきたのか、僕に対してどんな思いをもっているのかを話してくれて。それを聞いて感動したので、彼ならボブ役ができると思いました」。その話の内容はなんとも気になるが、監督からは「(その話は)墓場まで持っていくつもりです」とのことだった。でも、本作を見れば、監督とハ・ジョンウとの信頼関係の強さが十分にうかがえる。
ハ・ジョンウも本作の出演を経て、大切なものを得たという。「これは、実際に選手の一人が言っていたことですが、『サッカーのワールドカップはベスト16に入っただけでもものすごく賞賛されるのに、自分たちは金メダルをとらないと評価されない』と。彼らは最初からあまりにも高い期待値に向っていかなきゃいけないんだけど、それでも一段階ずつ、一生懸命上がっていこうという心意気を見せてくれた。そんな彼らの姿を見た時、演じる者として、本当にいろんなことを学べたし、その気持ちを色々と演技に役立てることができました」。
才能あふれる名選手の物語ではなく、いきなり国家代表のメンバーに選ばれた、へっぽこスキージャンパーたちの奮闘記である『国家代表!?』。でも、いろんな人生の悩みを抱えつつ、果敢にジャンプする姿は、確かに言い知れぬ感動を呼ぶ。また違ったオリンピックの面白さを再発見できそうな快作だ。【Movie Walker/山崎伸子】