石川由依&島崎信長、駆けだし時代の“運命的な出会い”「この出会いがあるから、いまがある」
イギリスの作家フィリップ・リーヴによるファンタジー小説を「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン製作・脚本で映画化した『移動都市/モータル・エンジン』(3月1日公開)。“都市が移動して都市を喰う”という壮大な物語を迫力の映像と共に描く本作で、人気と実力を兼ね備えた声優・石川由依と島崎信長が日本語吹替版キャストに抜てきされた。そこで、絶望的な世界で出会いを果たす男女として共演した彼らにインタビュー。お互いに声優として刺激を受ける点や、人生における“運命的な出会い”について語り合ってもらった。
本作の舞台は、たった60分で文明を荒廃させた最終戦争後の世界。残された人類は移動型の都市を創りだし、ほかの小さな都市を駆逐して、捕食しながら生き続けるという新たな道を選択。いつ喰われるかもしれない絶望的な日々のなか、激しい怒りを宿した一人の少女・へスターが反撃へと動きだす姿を描く。
壮大な冒険物語への抜てきに感激!キャラクターに感じた“強さ”に憧れも
子どものころに母を殺され、その復讐を遂げようとする孤独な少女のへスター役を演じた石川は、「こんなにスケールが大きくて“ワクワクするに決まっている!”という世界に、自分が登場人物の一人として入ることができるなんて」と今回の抜てきに大喜び。「こんな大作で主人公を演じさせていただくので、もちろんプレッシャーや不安もありました」というが、「せっかくの機会。絶対に演じきってやろうという強い気持ちがありました」とまっすぐな瞳を見せる。
一方、へスターに惹かれていく歴史家見習いのトム役を演じた島崎も「オーディションに受かるとは思っていませんでした」と感激しきりで、「初めてアニメーションの主人公に受かった時も、信じられない思いがしました。その時のことを思い出しましたね。いままで積み重ねてきたことが、一つ実ったような気がしました」としみじみと語る。
役柄についての印象を聞いてみると、石川は「へスターは、母親の復讐のために行動している女の子。普通だったらくじけてしまってもおかしくない状況です。それでもへスターは、なにがなんでも屈しない強さを持っています」と彼女のタフネスに「憧れる」とも。島崎は「トムはとてもステキな青年。気持ちの流れも共感できることばかりで、僕自身も大好きだし、やりがいのある役でした」と充実の表情。「トムは巻き起こる出来事に素直に反応していくので、僕もトムとして素直さを大切に演じていきました」と役作りについて明かす。
絆を深めていく間柄で共演した2人。声優として、どんな刺激を受ける存在?
へスターとトムは、お互いに変化・成長していく関係だ。過去の出演作でもコンビ感のある役柄で共演経験のある石川と島崎は、「“初めまして”ではないところからのスタート。信頼感と安心感があった」と声を揃える。
石川は「トムと島崎さんは、外見も雰囲気も似ているなと思って!トム役が島崎さんだと聞いた時、すごくピッタリだなと思ったんです」とニッコリ。「島崎さんは、お芝居に対してとても熱い想いをお持ちの方。私にはない着眼点も持っていて、とても尊敬しています。トムはうまくいかないことがあってもくじけず、優しくて、周りを和やかにしてくれる青年です。そういうところも島崎さんと似ているなと。現場での休憩中も『ロード・オブ・ザ・リング』の好きなキャラクターについてお話したり、周りを和ませてくださったりして、とても楽しかったです」。
島崎は「スタッフも皆さん話しやすい方ばかりで、現場はすごく和やかだったよね。作品や演技について、たくさん話し合うことができた」と振り返り、「僕もへスター役が石川さんだと聞いた時、ピッタリだと思った。芯の強さなど、石川さんとへスターにリンクする部分がある」と吐露。「トムを演じるうえでも、へスターが石川さんでよかったなと思っています。役やお仕事に対して、とても真摯に向かっていく方。ものすごいセンスもお持ちで、ステキな役者さんです。そして僕もこのお仕事がものすごく楽しいんですが、石川さんからはいつも“楽しんで演じている”というのが感じられて、刺激を受けます」。
声優という仕事、同期の存在…運命的な出会いを明かす!
絶望的な世界で運命的な出会いを果たすへスターとトム。人生において、“運命的な出会い”と感じるものはあるだろうか?
石川は「声のお仕事に出会えたことが運命」と心を込める。「私は小さなころに劇団に入って、舞台を多く経験させていただいていましたが、劇団の研究生の中でも声のお仕事は限られた人しかやっていなかったんです。そんななか、たまたま舞台を観に来ていたアニメ関係者の方にオーディションに呼んでいただいたことをきっかけに、初めて“声のお仕事”という道があることに気づいて。声が細いことなど、舞台では弱点に思っていたことが、声のお仕事では活かすこともできる。そう気づけた時は、本当にうれしかったですし、このお仕事との出会いがあったからこそ、いまの自分がいるんだと実感しています」。
島崎は「運や巡り合わせに恵まれて、いまの自分がいます。すべての作品、役、人との出会いに支えられて、進んできました」と感謝しつつ、「具体的に近い存在でいうと、同期に松岡禎丞というヤツがいて。同期に彼がいなかったら、いまの自分は絶対にいない」と告白。
「お互いに兵士A、生徒Aといった役をやっているような、下積み時代に仲よくなって。“彼が先に主役を射止めた”と思ったら、僕も射止めることができたり、その後もいろいろな場面で共演させてもらったり。僕は彼のまっすぐさや熱量から、たくさんのものをもらったんです。彼をすごく尊敬していて、だからこそアイツとちゃんと肩を並べられる同期でいたいし、“親友であり、ライバルだぜ!”と胸を張って言えるような存在でありたい。あんなにすごいヤツが同期にいるというのは大変でもありますが、自分も頑張らなきゃといつも刺激を受けています」と熱っぽく語ると、石川も「すごい!最高ですね!」と彼らの関係性に惚れ惚れとしていた。
※島崎信長の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
取材・文/成田 おり枝