アカデミー賞作品賞『グリーンブック』監督が初来日「『万引き家族』大好き!すぐに観て」
第91回アカデミー賞で作品賞をはじめ3部門を受賞した『グリーンブック』(公開中)のピーター・ファレリー監督が初来日を果たし、3月3日にTOHOシネマズ日比谷で行われた舞台挨拶に登壇した。上映後の会場に万雷の拍手に迎えられたファレリー監督。「人はみんな同じ。話し合うことさえできれば、人と人はつながれる」と力強いメッセージを送りながらも、最後には自身の監督作のタイトルをアピールする場面で「Shoplifters!」と是枝裕和監督の『万引き家族』の英語タイトルを絶叫。会場を爆笑の渦に巻き込むなど、ユーモアたっぷりの人柄で魅了した。
本作は、1962年の差別が色濃い時代を舞台に、インテリな黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と、彼に雇われた用心棒兼運転手のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)が、旅に出る姿を描く人間ドラマ。第91回アカデミー賞では作品賞、助演男優賞、脚本賞の3部門を受賞した。
初来日となったファレリー監督は「来日できて、言葉で表せないくらいうれしい。ずっと来たいと思っていた」と感激しきり。“ファレリー兄弟”として『メリーに首ったけ』(98)や『愛しのローズマリー』(01)などを共に手がけてきた弟のボビー監督は日本に来たことがあるそうで、「弟から『食べ物がめちゃくちゃおいしい』と聞いて来た。『すべて食べ尽くせ!』と言われた」と楽しみに日本にやって来たという。
これまではコメディ作品を手掛けてきたとあって「賞に絡んだ経験がなかった」というファレリー監督。数々の受賞を果たし「どうなるのか予想がつかなかった。すべてがサプライズ。本当にうれしく思っている」と充実の表情を見せていた。
またこの日は、花束ゲストとして女優でピアニストの松下奈緒も登場。松下が「主人公の2人のやり取りにユーモアがあって、釘付けでした。またこの2人に会いたいなと思った」と映画の感想を語ると、ファレリー監督は「本当にうれしい」と大きな笑顔。「ビューティフル!」と松下の印象をお茶目に語り、「2人の関係が“希望”が感じられるものだからこそ、この映画を作りたいと思ったんだ」と明かしていた。
「自分とは違う人に対して、心を開くきっかけになってくれたら。人はたぶん、みんな同じ。話し合うことさえできれば、きっと共通点を見つけて、人と人はつながれると信じている」と心を込めたファレリー監督。最後には「グリーンブック!」(監督)、「アカデミー賞受賞!」(松下)、「おめでとう!」(観客)とコールアンドレスポンスすることになったが、ファレリー監督は「Shoplifters!」と叫び、会場もびっくり。「『万引き家族』が大好きなんだ。もし観てなかったら、すぐに観て!」と語るなど、ファレリー監督のお茶目な表情、真摯なコメントに会場からも大きな拍手が上がっていた。
取材・文/成田 おり枝