『武士の家計簿』を鑑賞すれば無駄なものが省けるかも!?
12月4日(土)より全国公開となる『武士の家計簿』は、実在する家計簿から幕末の武士の生活を浮き彫りにした、一風変わった時代劇だ。刀を振るうだけが武士ではない。藩の裏方として、そろばんで激動の時代を生き抜いた御算用者(今で言うところの経理業務に近い)の姿を魅力的に描き出している。
堺雅人演じる主人公の猪山直之が仕えるのは財政逼迫中の加賀藩。そして同じく家庭の財政が切迫した猪山家も財政建て直しが急務となっていた。そこで現在の御算用者ともいえる会計士たちが本作を鑑賞する特別試写会が10月31日に開催され、会計士ならではの鋭い意見が数多く寄せられた。
本作が現在の会計士の仕事と通ずるところがあるかという問いに対しては、実に83%が「関連するところがある」と回答し、映画の題材になることがほとんどない幕末の御算用者の生活が興味深かったことを示した。また、本作で一番印象に残ったシーンや主人公の猪山直之に共感を持ったシーンを聞いたところ、「加賀藩の御蔵米が不正に横流しされている事実を直之が帳簿から読み取り、不正を進言したシーンに対し、文字通り“帳尻を合わせる”ことを良しとしないところが、会計の基本理念であり、共感できる」という意見が54%も寄せられた。一般試写会では“松坂慶子演じる猪山常の加賀友禅を売却して、最期に再度買い戻すシーン”や“絵鯛を用いた祝膳シーン”“仲間由紀恵演じるお駒の工夫をこらした倹約料理のシーン”などが印象に残ったシーンとして挙げられていただけに、専門家ならでの鋭いセレクトとなった。
さらに、猪山直之が行った家計立て直し計画に対する意見として、「体裁を保って借金を重ね家計を取り繕うのではなく、今現在の無駄を省いてやりくりしようという考え方にとても共感した」「常識や外面にとらわれ無駄を省けないという状況が、自分自身にも、周囲にもあるので、それを打ち破ったことに感銘を受けた」「債務超過に陥った現代の企業における再建計画のようだと思って観ていました。世間体を気にせず、倹約し結果的に家が長く続いたので、直之のやり方に賛成です」「必要のない資産を売却して返済に充てるは真っ当な計画だと思うが、土地や家屋を担保にして、もっと低利子の負債借り換えの方法はなかったのだろうか?」といったものが挙げられた。
現在、事業仕分けなどで注目されている“無駄を省く”という作業に関連した「会社や家庭などで省きたい無駄なものはありますか?」という質問には「国会議員」「家賃」「昼食代」「惰眠」「ブランド物」などのストレートな意見が集まるなか、女性から最も多かった回答が「衝動買い」という面白い結果に。わかっていてもなかなかやめられない状況は、今も昔も、職業に関係なく同じなのかもしれない。
御算用者の仕事が現在の会計業務と通ずることが多く、また猪山家が実在するということから、「今の自分の仕事が、180年前の御算用者の仕事と共通する部分があることを誇りに思った」「会計は時代、環境を問わず、社会を根底から支える、縁の下の力持ちだと改めて感じました」といった貴重な意見も出た。
猪山家は御算用者として、刀ではなく、そろばんで激動の時代を生き抜いてきた。「節約、倹約、無駄を省くということが重要視される現在だからこそ、1円たりともごまかさず、不正を許さない直之の信念は、会計士として見習うべき姿勢」との多くの声に代表されるように、猪山家の不正を許さない実直な生き方が、現代の会計士たちの共感を呼んだことは特筆すべきことだろう。劇場で鑑賞する際には、そういった面に注目してみると面白いかもしれない。【MovieWalker】