堕ちても美しい…ティモシー・シャラメが”自慢の息子”でいることに疲れた繊細な役柄を演じ切る!
端正な顔立ちと抜群の演技力で、注目作に立て続けに出演しているティモシー・シャラメ。どこか影を感じさせる繊細なたたずまいで、抜群の存在感を放っている彼が『ビューティフル・ボーイ』(公開中)でも、観る者の心を掴む美しい姿を見せている。
幼い頃からCMなどに出演し、ドラマや映画と順調にキャリアを重ねていったシャラメが、一躍脚光を浴びたのが、北イタリアを舞台に、男性同士の恋愛模様が淡い映像と共につづられていく『君の名前で僕を呼んで』(17)だ。シャラメは、教授である父親のアシスタントのオリヴァー(アーミー・ハマー)に対し、抑えることのできない恋心を覚えていく17歳のエリオを演じると、思春期ならではの複雑に入り混じった感情を見事に表現し、第90回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
そんな彼の最新作『ビューティフル・ボーイ』は、ドラマ「13の理由」などで活躍する脚本家が体験した薬物中毒との闘いと再生を、本人と彼を支えた父親の目線からそれぞれつづられた2冊のノンフィクションノベルを元に映像化した作品。シャラメが演じているのは、成績優秀、スポーツ万能な“自慢の息子”でいることに疲れ、薬物に溺れてしまう繊細な少年ニックだ。
堕ちていくニックの過程をシャラメは、快楽に身をゆだねた恍惚の表情を浮かべ、周囲に怒り狂い、そして自分を恥じて泣き崩れ…とエモーション豊かな演技で表現。その眼差しには、どこか瑞々しさや美しさすら漂っており、なにをしでかすかわからない若さゆえの危なっかしさ、いけないとわかっていてもドラッグを求めてしまう切実さを感じさせ、観る者の心を深くえぐってくるのだ。
哀れでありながらも同時に美しくもある相反するような表情で、人物像に深みを与えているシャラメ。若干23歳とは思えない彼の見事な姿に目が釘付けにされてしまうことだろう。
文/トライワークス