80年代カルチャーがてんこ盛り!いま1番“懐かしくて新しい”『ストレンジャー・シングス』入門
さらにスティーヴン・キングなど80年代を網羅するオマージュの嵐!
同じく、本作に大きな影響を与えているのが、80年代に多くの作品を発表し、盛んに映画化もされている作家のスティーヴン・キング。彼の書籍のタイトルを思わせるようなフォントのタイトルロゴから、ごく平凡な田舎街が舞台という設定、超能力や怪奇現象という超現実的な物語に、“少年期の純粋な感情”や“人生に絶望感を覚える中年”といったテーマまで、彼の作品ではおなじみの要素が本作には描かれている。
もちろんビジュアル面でも、山の中の線路道を歩くといった『スタンド・バイ・ミー』(86)を彷彿させるシーンなど、オマージュが多数登場。その他にもジョン・カーペンターやジョン・ヒューズなど、SF、ホラー、青春ドラマに至るまで、80年代を通過した人なら、懐かしい気持ちになること間違いなしのネタが、惜しげもなく入れ込まれており、元ネタを探すという見方だけでも十分に楽しめるのだ。
ノスタルジーだけじゃないフレッシュなおもしろさが魅力!
ここまで、スピルバーグやキングからの影響を紹介したが、かといって、この作品は80年代ルックをモザイク的につなぎ合わせた、当時を知る大人だけが楽しめる懐古的なものではない。そもそも、作り手のクリエイター、ダファー兄弟は84年生まれで、直にその時代のカルチャーを享受した世代ではないのだ。
彼らは、敬愛する時代へのオマージュのためだけに、このドラマを作ったのではない。MKウルトラ計画(CIAが極秘に行っていたとされる洗脳実験計画)を発端とした怪奇的なストーリーを描くため、必然的にインターネットや携帯が普及していなかった80年代が舞台となり、物語を一番魅力的に描く方法論として、オマージュを盛り込んだに過ぎないのだ。確固たる話の軸の上で、オマージュが巧みに結びつき、観るものを引き込むような斬新なストーリー展開や世界観を構築する役割を担い、“懐かしいのに新しい”というフレッシュな感覚の映像作品へと昇華されている。
スピルバーグ監督が、自らが大きな影響を与えた同時代のポップカルチャーを、未来的世界観に落とし込んだ『レディ・プレイヤー1』(18)や、キング原作の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)など、80'sカルチャーへの立ち返りが盛んな現在。そのムーブメントの中心的な存在となっているこの「ストレンジャー・シングス 未知の世界」を観ないわけにはいかないだろう!
文/トライワークス