『バースデー・ワンダーランド』の裏話が明らかに!?原恵一監督「攻めまくる作品に」
松岡茉優がアニメーション映画初主演を務めることで注目を集めている『バースデー・ワンダーランド』(4月26日公開)の公開直前イベントが23日に都内で行われ、本作のメガホンをとった原恵一監督とキャラクター/ビジュアルを担当したイリヤ・クブシノブ、そして『シン・ゴジラ』(16)を手がけた樋口真嗣監督が登壇。イリヤ抜擢の経緯など様々な裏話が明らかにされた。
本作は柏葉幸子の児童文学「地下室からのふしぎな旅」を原作に、ひとりの少女が誕生日前日に経験する大冒険を描いたファンタジー作品。突然現れた大錬金術師のヒポクラテスとその弟子・ピポに連れられて、ワンダーランドへと足を踏み入れた12歳のアカネ。彼女は色が失われる危機に瀕していたワンダーランドの救世主として色とりどりの町をめぐり、やがて人生を変える大きな決断をくだすことになる。
一足先に作品を鑑賞したという樋口は、感想を訊かれると「原さん攻めてるな〜と思いました(笑)物語も冒険ものですけど、それ以上に原さん自身が冒険しているなと」と述べ、本作のファーストビジュアルが解禁された一昨年の東京国際映画祭での出来事を「『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』が上映された時に、ドヤ顔で1枚だけパネルを見せてくれて、『すごい奴を見つけたんだよ』と言ってましたね。でも何が起きたのかは絶対教えてくれなかったんです」と振り返る。
その際に原が語っていた“すごい奴”というのが、本作でキャラクターデザインを担当したロシア出身のイラストレーター、イリヤ・クブシノブ。抜擢の経緯について原監督は「最初デザインを誰にしてもらうか考えていた時に、たまたま入った書店でイリヤの画集を見て『これだ!』と思ってすぐにコンタクトを取りました。最初は絶対日本人だと思って、変なペンネームの人だなと思っていたら、こういう男が現れました」と明かす。その時すでに多くのアニメーション会社からオファーが来ていながらも、本作に携わることを決めたというイリヤ。原との出会いを思い出しながら満面の笑みを浮かべ、「原さんの映画だから選んだんです」と、絶大な信頼を寄せていることをうかがわせた。
終始流暢な日本語でトークを進めるイリヤだが「仕事始めた時には日本語が喋れなくて、コミュニケーションがバラバラだった」と明かす原監督。最初の頃は簡単な英会話や絵を描くことを通じて意思疎通を図ったとのことで、イリヤは他のアニメーターから“ドS”だと形容されている原監督の印象について「優しいです」とにんまり。「デザインでもアニメーションでも音楽でもちゃんとしたイメージがあって説明するのがうまい。難しいシーンでも自然な流れが全部頭の中にあって、それを自然に画面に出していることに驚きました」とその圧倒的な手腕に敬服している様子。
またトークの中では原監督の代表作である国民的アニメ「クレヨンしんちゃん」の野原ひろし役で知られる藤原啓治が声を吹き込む悪役ザン・ビのデザインについてや、藤原と矢島晶子の「クレヨンしんちゃん」コンビ起用の理由、さらに劇中でアカネの耳に猫耳が生えるシーンが誕生したきっかけなど和気あいあいと語っていく3人。
さらに原監督は「正直なところファンタジーは興味のない分野なんです」とまさかの告白をすると、これまでの作風とは一味違う本作について「エンターテインメントのファンタジー作品ということで、僕なりに攻めて攻めて攻めまくる作品にしようと思って作りました」と明かす。そして「今回の作品に限らず、毎回お客さんとの真剣勝負だと思って作っているので、そのつもりで皆さんに向かっていきます。なので皆さんも、負けるもんかと言う気迫で観てくれると嬉しいです」と会場に集まった観客に呼びかけていた。
取材・文/久保田 和馬