罪人の“いま”を赦すのか…話題のWOWOWドラマ「悪党」をクロスレビュー!

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罪人の“いま”を赦すのか…話題のWOWOWドラマ「悪党」をクロスレビュー!

5月12日(日)より、WOWOWの連続ドラマW枠にて放送が開始となる「悪党 ~加害者追跡調査~」。豪華キャストとスタッフが集結していることで、早くも話題を集めている本作の第1話を、映画ライターがひと足先に鑑賞。その熱いレビューをお届けする。

重層的な見どころが詰まったヒューマン・ミステリー(映画ライター・高橋諭治)

12日より放送開始のWOWOWの連続ドラマW「悪党 ~加害者追跡調査~」を映画ライターがレビュー!
12日より放送開始のWOWOWの連続ドラマW「悪党 ~加害者追跡調査~」を映画ライターがレビュー![c]1996-2019 WOWOW INC.

今まさにキャリアの絶頂期にある『64-ロクヨン-』(16)、『友罪』(18)の瀬々敬久監督が、薬丸岳の同名小説を映像化した「悪党」は、容易には答えの見つからない重いテーマを扱った、野心的な連続ドラマだ。凶悪犯罪の被害者遺族の視点に立ち、法的に罪を償って社会に出てきた犯罪加害者を“赦すべきか、赦さざるべきか”という問題を追求。しかも本格的なディテクティブ・ストーリーに仕上がっていることが、いっそう豊かな興趣を添えている。

第1話「悪党」で主人公、佐伯(東出昌大)のもとに持ち込まれる案件は、11年前にある少年を殺害し、いまは振り込め詐欺グループのリーダーとして荒稼ぎしている男の現状調査だ。自らの素性を隠して対象の男に接近した佐伯は、探偵という中立的な立場から、かつて悪党だったこの男が現在も赦さざるべき悪党なのかを“判定”しなくてはならない。そんな人間という生き物の曖昧なグレーゾーンに切り込むサスペンスフルな心理劇と共に、佐伯自身の忌まわしい過去が明かされ、重層的な見どころが詰まったヒューマン・ミステリーになっている。その濃密にして陰影に富んだ映像世界から目が離せない。

作品に小気味良さを与える松重豊の演技
作品に小気味良さを与える松重豊の演技[c]1996-2019 WOWOW INC.

静かな凄みをみなぎらせて佐伯の苦悩と激情を体現する東出昌大、軽妙なユーモアを振りまきながら抜け目ない探偵事務所所長の木暮役を演じる松重豊のコンビネーションも快調。そして佐伯の“調査結果”が招き寄せてしまう第1話の衝撃的なエンディングを目の当たりにすれば、この先いかなるスリリングな事件簿が待ち受けているのか、ますます期待せずにいられない。

『友罪』に続く、瀬々敬久×薬丸岳のタッグの意欲作(映画ライター・折田千鶴子)

ズドン、と鳩尾の深いところに一撃くらったような痛みと目眩に襲われる。目眩とはつまり、その後の展開に対して覚える“恐怖と期待”がないまぜになった、心はやるクラクラ感。ひどく2話が待ち遠しく、どうにも落ち着かない。

第1話では、被害者遺族を渡辺いっけいが演じる
第1話では、被害者遺族を渡辺いっけいが演じる[c]1996-2019 WOWOW INC.

既に“映画のようなクオリティ”と誉れ高い“連続ドラマW”枠。それもそのはず、名立たる映画監督が多く手掛けてきており、本作の演出は名匠、瀬々敬久。しかも瀬々監督の並々ならぬ意欲作『友罪』に続き、薬丸岳の原作との再タッグ、かつ犯罪加害者の葛藤や贖罪を描いた『友罪』と表裏をなす一作である。本作は、被害者遺族による“赦すべきか、赦さざるべきか”という苦悩や葛藤をテーマに据える。

第1話では、元警官の探偵、佐伯修一が、依頼人である犯罪被害者遺族のために、加害者に接触するという大筋に、佐伯自身が被害者遺族である過去が絡みつく。理性がぶっ飛ぶくらい犯罪者を憎む佐伯が、いわば潜入捜査のごとく“赦されるに値する奴か”を調査するのだが、身分を偽って加害者に接触する緊迫感と、佐伯家族が巻き込まれた事件が少しずつ明かされる、二重の圧迫感が観る者の心をギュギュッと絞り上げる。憎むべき加害者にもその後の人生があり、善悪では割り切れぬ複雑な懊悩、人間心理の奥深くへ入り込んでいくザワザワ感が、早くもビンビン肌に突き刺さる。

【写真を見る】男の苦悩と奮闘を熱演し、東出昌大が新境地を開拓
【写真を見る】男の苦悩と奮闘を熱演し、東出昌大が新境地を開拓[c]1996-2019 WOWOW INC.

佐伯を演じるのは、『菊とギロチン』(18)に続いて瀬々監督と組む東出昌大。たぎる怒りを抑える男の苦悩と奮闘を熱演し、さらなる新境地を開きそう。今や主役級のベテラン松重豊が探偵事務所所長を演じ、いい具合にリズムと軽妙さを差し込み、誰もが見やすい作品に和らげる。第1話のラスト、悲鳴に近いため息を漏らし、収まらぬ胸騒ぎのまま、第2話へ。

5月12日の夜10時から放送される第1話は無料となっているので、まずはチェックしてほしい。

構成/トライワークス

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