リドリー・スコット監督、『ロビン・フッド』について大いに語る インタビュー1|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
リドリー・スコット監督、『ロビン・フッド』について大いに語る インタビュー1

インタビュー

リドリー・スコット監督、『ロビン・フッド』について大いに語る インタビュー1

第63回カンヌ国際映画祭のオープニング上映作品『ロビン・フッド』が12月10日(金)より公開となる。主演のラッセル・クロウとケヴィン・デュランドが来日、イベントも行われ、公開に向けてますます盛り上がる中、本作についてたっぷり語ってくれたリドリー・スコット監督のインタビューが届いた。

――この作品から観客が、どのような映画的な体験を楽しむと期待していますか?

「観客は古典的な伝説の世界を訪れることになる。それは神話なのか伝説なのか? 彼は本物で、本当に存在したのか、それとも単なる神話なのか? 次回作を何にするかが自分でもわかっていなかった時、ラッセルが私にこう聞いた。「『ロビン・フッド』を作ってみたくはないかな?」と。これは男にだけのことかも知れないが、耳が即座にぴくりと動いて、私はこう答えていた。『そいつはものすごく良いアイデアだ』と。ロビン・フッド物語はもちろん伝説上の話だが、本当のことではなかったのか? 彼は存在したのか?それとも単なる想像上の人物なのか?これはずっと心惹かれる疑問だった。ロビンは古典的なDudley-Do-Right(カナダの騎馬警官。アニメの主人公)であり、偉大な戦士でもあった。この2つは古典的な組み合わせだよ。ところで、これまで彼がどのように扱われてきたかを見た時、批判的になるべきではないが、新しい見せ方は必要か?と問えば、それは絶対に必要だ。では、我々に新しい見せ方ができたか? もちろん新しい見せ方をした。ということで今回は、ロビン・フッドの伝説を再び創案したものだと私は考えている。映画は、ロビンがどのようにして無法者となったかについて語っている。そこで映画が終わりに近づくと観客は、ロビン・フッドを無法者と認めるようになる」

――物語を進めるために、歴史的な事実を活用しましたか?

「私はいつでもそうした方が強力だと思っている。たくさん存在するロビン・フッドものを知ると、『どうしてザ・シェリフ・オブ・ノッティンガムはあんなに悪者なのだ? どうしてジョン王は悪い奴なのだ?』という疑問が生まれ、第一に当時の経済状況、第二に当時の政治的状況などを理解しないと、観客は物語に納得ができない。そこで、ひげをくるくる回す場面がたくさん登場して、『悪玉』と『善玉』の違いを理解することになる。だが、私はいつでも登場人物たちがどこから生まれてきたのかを知りたい。どういうことかと言えば、『グラディエーター』の例をとってみると、マルクス・アウレリウスと、その息子コモダスに関する後世の歴史を通して、きちんと注意深く物語を追って行くことで、マキシマスという想像上の人物が彼らとつながる。そして今回も、同じようなやり方をした。そこでスタート地点で一番適切な質問は『どうして王国はあのように混乱してしまい、どうしてあれほど税率が高かったのか?』だと考えた。答えは、彼らは破産したからだ。では、どうして破産したか? それは10年にもわたって神と十字の名の下に、獅子心王リチャードが聖地で『善き事』をするために何度も出征を繰り返したからだった。ところが実際のところ、彼がやったのは王室の金を全て費やして乱痴気騒ぎをしていたにすぎず、その結果、国は破産してしまった。ということで、そこが物語をスタートするのに適切な場所だったのだよ」

――そして主要なキャラクターの紹介にも好ましいやり方だと思われたのですね

「そうだよ。まず、不満いっぱいの兄弟、ジョン王(オスカー・アイザック)が登場する。彼は全くの悪者でもなければ、全くの愚か者でもない。彼の洞察力はかなりまともだ。ただ、彼の場合は母親のエリノア・オブ・アクイテイン(アイリーン・アトキンズ)を我慢しなければならない。そこが彼のスタート地点となる。彼の物語は、英雄である獅子心王リチャードが死んだ後から始まる。そこから映画はスタートして、我々は破産した国を抱えて大混乱をきたしているジョンに出会う。ジョンは帰国した軍と共に国を治めていこうと努力している。ロビンを含む十字軍から母国に戻った何千人もの男たちと一緒に。ただ問題は彼らがイギリスに戻ったら、国を出た時と同じところからまた自分たちの暮らしを始めたいと思っていることだ。ところが、そもそも彼らの家族はまだ存在するのか? それとも山賊行為をするしかないのか?」

――全ての調査をした後で、あなたはロビン・フッドが実在したと信じますか?

「絶対に存在したよ。それは『アーサー王は存在したか?』と質問するようなものだ。アーサー王はもちろん存在する。ところが歴史家たちは常に『みんなが知っているような形ではない』と言う。そこで私は『あなたはその場にいたのですか?』と尋ねる。『ノー』と彼らは答えるので、私は言い返す。『ではどうして違うと言えるのか?』と。すると彼らの答えは『これこれの本にこう書いてある』だ。そこで私は『恐らく20世紀に書かれたであろうその本は、19世紀に書かれた本の中から事実だと思われている素材を取り上げ、その19世紀の著者は、16世紀に書かれたものから引用している可能性は大きい。そうなるともう話は時のもやの中で、誰にも本当のところはわからないのでは』と言う。だから歴史の解釈にはたくさんの自由と論理的な評定が存在するのだよ。ロビン・フッド、グリーン・マン、ロビン・オブ・ロクスレイ、シャーウッドの森のロビン、なになにのロバート、これこれのロバートなど名前は様々だ。グリーン・マンという名前が付いているイギリスのパブは全てがロビン・フッドのことで、彼の物語は11世紀から14世紀の間に起きたことだ。明らかに英雄的で公平な、金持ちから盗んで貧しい者に与えた英雄的な人物を象徴する人間は存在したのさ。ただし、300年から400年ほど前の中世の時代には、どの騎士たちの頭の中にも、正しいことをするのが最も重要だという考えがしっかり根付いていた。騎士道はあの時代に生み出されたものだからね。ロビン・フッドは明らかに騎士道精神の持ち主だった。彼は粗野ではなく、できればユーモアを忘れずに正義を実行したいと思っていたはずだ。彼はなかなかの人物であり、あくまで私の直観だが、彼はほぼ間違いなく存在した」【Movie Walker】

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