リドリー・スコット監督、『ロビン・フッド』について大いに語る インタビュー2
インタビュー1より続く
――この作品は撮影に入るまで何度か作業がストップしています。製作は無理だと心配したことは全くなかったのですか?
「かなり深く関わったところで、ストライキで話がもつれ、やる・やらない、やる・やらないが繰り返された。映画は安いものではないので、当然スタジオは神経質となり、そこで聞いてきた。『もう手を引くべきではないか?』と。その後、私は作業を進められなくなった。製作そのものの動きが取れなくなってしまったのでね。もちろん自分としては続けたかったが。何度かもう実現は無理だと思ったが、それは政治的な様々な動きに対してコストがかかり過ぎるからだった」
――これまでたくさんの大作を手掛けられました。今回はそれらに比べていかがですか?
「知っての通り、このような撮影が好きだから、私は決して文句は言わないよ。一日は通常6時45分から始まる。私には非常に優秀はマックス(・キーン)という第一助監督がいてね。彼がトレーラーのドアの外で立っていたとして、外がぬかるんでいるので『ブーツを脱いで中に入りなさい』と私が声をかける。コーヒーとスクランブルエッグを彼に勧めてから、私たちは文字通りきっかり15分間で、その日のスケジュールに目を通す。外には400人の強力なユニットと最大で1200人のエキストラが控えている。そこで私たちはコーヒーを飲み干して外に出て、大地を踏んだら走り出す」
――ウェールズのペンブロークシャーで撮影された戦闘場面は見事です。撮影は簡単ではなかったと思います。どのようにして行われたのですか?
「とてもうまく進んだよ。 我々はぜんまい仕掛けのように走り回った。ウェールズの海岸での撮影が私には実はとても心配だった。というのも撮影は鎖かたびらを着て、槍や矢を手にした騎士、馬、上陸用舟艇を海岸に運んで行われた。もちろん、海はいつも穏やかに大人しくしてはくれないので、あの撮影は完全に呪われた状態で散々だった。ウェールズの海岸は見事だが、波はドーンと押し寄せ、一度押し寄せるとその動きは稲妻のようで、全てのものが同じ位置に戻ることはない。そこで例えば『アクション』と声がかかり、上陸用舟艇が到着し、馬が疾走して浅瀬で足踏みをする。矢が空に舞い、『カット』と叫べば、上陸用舟艇が元に戻ることを期待するのが普通だが、それができない。ろくでもない砂に埋まってしまうからだ。そこで大波で舟艇を持上げるために大波を待つ。それからまた撮影が再開される。ということで、カメラ、クルーも含めて、波が来た後は全てが元の位置から動いてしまっていたよ」
――海岸には何台のカメラを使いましたか?
「撮影をスムーズに進めるために11台。前もってとんでもない事が起きた場合を想定して9日間の日程を組み、9日間で撮影を完了した。驚きだよ」
――あなたが撮影した中でも一番大変だったシークエンスの1つでしたか?
「うん、そうだった。だが最悪の1つは『グラディエーター』で撮影した、マルタ島の円形闘技場でのコロシウムのシーンだった。気温が華氏120度(=摂氏48.9度)もあり、ほこりっぽくて不潔だった。私はイギリス人だから、ちょっとした霧雨や湿気は大丈夫だが、面白いことにペンブロークシャーの海はちょうどメキシコ湾流の外れで、それが理由でウェールズの海岸線は暖かい。それでみんなと同じように私も撮影時間の半分は腰まで海に浸かっていた。兵士たちは鎖かたびらを着て兜を被り剣や弓矢などを手に持って一日中水浸しだったが、正直、あれほどの熱気をこれまで見たことがなかったね。彼らは『グラディエーター』の最初のところで、ドイツ人の戦いのために集めた同じ狂ったグループの連中だった。そして私は同じ森と同じ谷で撮影をした」
――そうでした。『グラディエーター』のオープニングシーンを撮影したボーン・ウッドの森で撮影されたのですね。ほぼ10年前と同じ場所に戻られて、どのようなお気持ちでしたか?
「あそこに戻るのは信じられないほど素晴らしい気分だった。ラッセルと私は全く同じ場所に立って、『わお!ここは枝に止まった鳥について初めて話をした場所だ。その時、君は家のことを考えていたよね』と話をしたよ。それが『グラディエーター』の最初の撮影場所だった。文字通り、我々は同じ谷で撮影を行った。丘の上の、マルクス・アウレリウスのテントがあった場所にフランスの城を築き、下の方で戦場のシーンを撮影した。実はあそこの谷で使用しているロケ地は1ヶ所だけではない。というのも、色々と活用できる場所でね。数百メートル車で行って角を回ると、突然スペインにいるかのようになる。次の角を曲がると、また違う場所になる。信じ難いよ」【Movie Walker】