“モンパチ”映画『小さな恋のうた』制作秘話を、眞栄田郷敦と監督が明かす
いまなお地元沖縄で活動を続ける、伝説のロックバンド「MONGOL800」こと通称“モンパチ”。彼らをモデルにした『小さな恋のうた』が5月24日(金)に公開する。
本作はモンパチの名曲の数々をモチーフに、バンドにかける高校生たちの熱い青春を佐野勇斗、森永悠希、山田杏奈、鈴木仁らフレッシュな若手俳優の共演で描いた青春映画の快作だ。劇中のバンドでギターを担当する譜久村慎司役を務めたのは、モデルとして活躍し、本作が映画初出演となる眞栄田郷敦。メガホンをとったのは、『羊と鋼の森』(18)『雪の華』(19)など、数々の話題作を手掛ける橋本光二郎。息ピッタリの2人に作品誕生までの秘話を聞いた。
―― “モンパチ”の楽曲をベースに映画を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
橋本光二郎(以下、橋本)「元々は、モンパチの高校時代の後輩で、デビュー前から彼らのステージを客席で見ていた、本作の企画プロデューサーである山城竹識さんが持っていた企画なんです。『小さな恋のうた』と『あなたに』のPVを作ってほしいとオファーを受けた山城さんが、『PVではなくドラマという形のほうがふさわしいのではないか?』と、アルバム『Message』の1曲1曲をオムニバスのテレビドラマにするという企画を立て、そこから紆余曲折があり、映画の企画になった段階で私が参加させていただいたんです」
――眞栄田さんは、SNSにも「かけがえのない出会い」とつづるなど、沖縄では濃密な時間を過ごしたそうですね。1か月半にわたるロケで印象深かったことを教えてください。
眞栄田郷敦(以下、眞栄田)「沖縄のロケは常に穏やかでした。僕にとっては初めての映画出演でしたが、とにかく現場の雰囲気が温かくて。周囲のみなさんからも、『なかなかこれだけいいムードの現場はないよ』と言われました」
――初の映画出演でバンドのギタリストという難役を務めるにあたり、ご苦労もあったのではないでしょうか。
眞栄田「音楽は昔から好きですが、ギターは初体験で。半年間、毎日練習を繰り返しました。馴れないうちはどうしても弦を押さえる時に力を入れすぎてしまうので指先がガサガサになってしまい、シャンプーをする時手が痛くて痛くて(笑)。特に苦労したのは、『DON’T WORRY BE HAPPY』のギターリフですかね。これはずいぶん練習しました。でも練習がイヤにならないよう、先生がちょうどいい課題を出してくれたので、最後まで楽しみながら続けることができました」
――物語の舞台が沖縄ということで、リアルタイムで進行している米軍基地問題などが絡みながら、メンバーとフェンスの向こう側で暮らす外国人少女との交流が描かれていますね。
橋本「沖縄を舞台にするということで、米軍基地の描写は避けて通れません。ニュースで伝えられる基地のことは『問題』ばかりがクローズアップされますが、現実にはその基地と関わって生活している人たちもいるし、当然そこでは国籍や言葉が違っても人対人の関係もあります。当然、基地内部で暮らすアメリカ人にも生活があるわけで…。ですが、この作品で描きたかったのはあくまで高校生たちのバンドにかける純粋な物語です。米軍基地の部分をあまりにもクローズアップしてしまうと政治色が強くなりすぎるので、描写の仕方とバランスには気を配りました」
――劇中では、山田杏奈さん扮する慎司の妹・舞が、兄の影響でギターを始めます。小柄ながら重たいギブソンのレスポールを肩に掛け奮闘する彼女の姿も印象的でした。
眞栄田「そうですね、彼女がいたから僕も負けてられない!と最後まで練習をがんばれたのだと思います。舞のおかげでバンドのなかでの自分の立ち位置みたいなものが掴めたような気がしました」
――最後に、監督より観客の皆さんにメッセージをお願いいたします。
橋本「若者たちが一生懸命青春を謳歌する姿に胸を熱くしてもらえたら嬉しいです。僕と同年代のモンパチ世代にも楽しんで欲しいし、いまの若い世代の人たちにも、ぜひ劇場でモンパチの楽曲を体感して、なにかを感じとって劇場をあとにしてほしいですね」
取材・文/本田哲也