怖いのは貞子だけじゃない!?『貞子』で中田秀夫監督が見せる“恐怖”の本質!
長い髪で表情は見えないまま、のしのしと迫ってくる、いまや日本を代表するホラーアイコンとなった貞子。シリーズ第1作を手掛けた中田秀夫監督が再びメガホンを取り、怖い貞子を甦らせたのが『貞子』(公開中)だ。
近年はプロ野球の始球式でマウンドに上がったり、TikTokの動画を積極的にアップしたりと、キャラクター先行でユニークな活動が目につく貞子。だが、本作ではこれまで通り、TVのモニターの中に映った井戸から出てきては人々に襲いかかる。“見たら呪われる”から“撮ったら呪われる”というSNS時代を反映するかのように呪いを進化させているが、本作における恐怖の本質は、実は別のところにある。
『リング』シリーズをはじめとしたホラー作品はもちろん、定年退職した男性の悲哀を描いた『終わった人』(18)など、人間ドラマにも定評のある中田秀夫監督。昨年公開された『スマホを落としただけなのに』では誰の身にもおきかねない恐怖を描き、好評を得た。
本作では主人公・茉優(池田エライザ)に執拗に迫ってくる『リング』(98)『リング2』(99)の唯一の生き残りである倉橋雅美(佐藤仁美)や、事件のカギを握る少女の母親で霊能力者の祖父江初子(ともさかりえ)といったキャラクターを登場させ、それぞれのキャラクターの背景にあるストーキングや児童虐待といった現代社会が抱える問題が見えてきて、“呪い”の化身という得体の知れない存在である貞子よりも、むしろ恐ろしく感じられる。
幽霊より恐ろしいのは身近にいる人間だった!…なんてオチの作品も数多くある。どこに怖さを感じるかは人それぞれかもしれないが、登場人物の1人1人をよーく観察すると、恐怖の本質が見えてくるかもしれない。
文/トライワークス
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